退局と転科(上)
2013年10月15日 コンサルタントK
A先生との出会いは、2013年2月の事である。A先生はC大学の医局に属し、医局人事にて様々な病院を転々としていた。A先生の専門は循環器であり、心臓血管外科医として勤務していた。A先生は40歳を目前に、このまま心臓血管外科医として勤務を続けていくべきか内科等へ転科するべきか迷いがあったのである。
A先生との最初のコンタクトは、A先生の友人であるB先生からの紹介であった。B先生は、私が懇意にさせていただいている先生の一人だ。B先生からA先生を紹介したいとの連絡があった。連絡先をお伺いし、早速A先生へ連絡を入れた。紹介されたA先生は当初、転職について、近々でお考えの様子だったが、大学医局人事にて今まで動いてきた事もあり、退局し転職をする事に対する不安と医局との絡みのない先を探す事が可能なのか不安があった様だ。
A先生は医局を離れ転職をされた先生がどの様な先で勤務をされているのか、C大学の影響がない先を探すとなると他県への転居や他科目への転科が必要になるのではないか、といった不安を持たれていた為、私は先ず先生との面談を依頼した。C大学の医局を離れ近隣の病院で勤務をされている先生がいらっしゃる事など近隣状況のご報告と、先生の希望や条件をお聞きする為に電話を入れた。電話での内容から早急に面談を組んだ方が良いと判断し、数日後の夕方、面談の約束を取り付けた。
先生との面談はC大学近くの喫茶店で行った。A先生は、非常に若く見え和やかな感じの先生であった。先生のお話をお伺いすると幾つかの悩みが挙げられた。先生が転職を考えたのは、このまま心臓血管外科医として勤務を続けて行く事への悩みや、医局人事の中で様々な病院へ派遣され続けて行く事への悩みがあった。また、心臓血管外科医としての限界も感じていたのである。
A先生には医師として今後自分の進む道に幾つかの考えがあった。先ず、大学医局を退局する考えは変えずに、退局後も心臓血管外科医として進む道である。しかし、高齢化が進む日本の現状を考えた場合、地域に密着した医療が行える医師として、老人医療に取り組む事が出来る内科医として新たな道を進むべきではないかとの思いもある。A先生の思いは内科への転科も視野に揺れ動いていた。
どちらにもハードルがあると考えられていた。先生は「僕みたいに転職を考えられている先生がいるのか」と仰った。私は、同様にお考になられた先生は沢山おり、A先生同様悩まれた末に転職を成功させた先生がいらっしゃる旨お伝えした。
A先生は続けた「心臓血管外科医として転職を考えた場合、C大学の医局の影響があるD県内での転職は難しいでしょ」と言われた。確かに先生の言われるとおり通常で考えれば、医局を離れた医師が、医局の影響のある医療機関で勤務する事は難しい。心臓血管外科医として働いていく場合、他県への転職も視野に入れて行かなければならないとお考えになられていた。
A先生は続けて「内科医として転科するにしても、外科畑が長く内科については、一からに近い状況であり、僕の様な医師を雇ってくれる先があるだろうか。内科医については研修を受けるようなもので、若い研修医ならともかく僕の様な30代後半の勉強したいと言う様な医師を病院は受け入れてくれるものなのか?」と話された。私は、年配の先生でも転科される先生はいらっしゃるし、医療機関との交渉次第であると伝えた。
私は先生の希望を確認し、その内容を纏めた。検討する希望としては、一つ目に心臓血管外科医としての転職、次に内科医へ転科し転職を行う事である。勤務については、週5日、当直は週1回程度、日直等は、病院の規定に副うといった内容で年俸についても多くを望まれてはいなかった。先生の意向としては、医局を離れる事による障壁を問題視されていた。
住み慣れた地元で家族と共に過ごして行く事を第一としている様だった。
私は、早速、先生の住み慣れた地域にて、相談が可能な先が有るかお調べする様にした。先生には多少時間を頂きたい旨、お伝えしその日の面談を終了した。翌日、先生の希望を踏まえ、医療機関へ電話をした。
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