退局と転科(下)
2013年11月01日 コンサルタントK
先ず、今回の転職には大きな壁があった。大学医局との関係と転科である。
その点を踏まえ、先生が特定されない様に状況お調べした。やはり状況は難航をきした。現在大学医局に属している事、退局を考えてはいると雖も受け入れには大学側からの反発も考えられる為、反応は良くなかった。また、転科についても医局との絡みは薄れるにしても即戦力を求める病院側としては、受け入れに慎重である様子が伺えた。
まだ交渉は始まったばかりである。私は、引き続き医療期間との交渉を進めた。交渉を進めていく中で、一つの医療機関から検討したいとの返事を頂いた。心臓血管外科医としての受け入れではなく、内科医としての受け入れである。名乗りを上げたのは、先生が住む市内でも有数の急性期の病院である。地域の急性期から慢性期に至るまで、その地域の中核を担っている。大学医局との関係も強く、医局からの派遣も多い、先方としては、先生の専門外で有れば、医局とのしがらみは無いと判断したのである。
先方は医師が不足している中、転科だとしても、地域に根差した医療の提供を行ってくれる医師を探していたのである。実際に、その様な先生の受け入れにも力を入れているとの事だった。早速、A先生へ病院の事を伝えた。先生も病院の事は良くご存じの様で、研修医時代に当直医として勤務をした事があったとの事でした。
先生のイメージとしては、非常に忙しくて急患を断らないといったイメージを持たれており、悩まれていた。先生は「僕に勤まりますかね」と仰られた。「一度面談されてみては如何ですか」と促し、お会いして頂いて、それからお考えになられれば良い旨、お話させて頂いた。
先生が面談に躊躇していたのは、大学医局人事が目前に迫っていたのもあった。進退を決めなければならない重要な局面に来ていたのである。4月から新たな職場での勤務を始めるのか、少し時間をかけて考えた方が良いのか、考えあぐねていたのである。
私は、「とにかく会いましょう」とお願いした。
先生は面接を受けることを決め、面接は週末の夜に行われた。面接には、院長先生と内科診療部長にご対応頂いた。面談は終始和やかで退局を思い悩む先生の思いや、内科医への転科に思いを巡らせるA先生の思いが語られた。院長先生は、A先生へ是非その思いを当院で発揮して欲しいを話され、先生もその言葉に感謝の意を伝えられた。
面接が終わり院内の見学を行った。院内は数年前に改装されたとの事で、綺麗で設備も整っており、先生の転職への気持ちも大きく傾いた様だった。
面接から数日が過ぎ、先生へ連絡を入れ、改めて先生の感触をお伺いした。
先生の感触は、面接時に感じた通り良好で、話を進めて欲しいとお返事があった。早速病院に先生の意向を伝えた。病院側の意向も同様で、諸条件の提示をお願いした。
条件としては、週5日勤務、当直月2回 内科医として、勉強が出来る環境を提供頂き、年俸も1,700万円と転科を思わせない金額だった。
先生へ内容をお伝えすると、先生の予想していた以上の提示に戸惑っていたが、病院側からの提示に感謝を示された。先生は医局へ退局の意思を伝える決意を固めた。先生からは数日待って欲しいと言われ、後日、改めて連絡を取り合う約束をした。
後日、先生へ連絡すると「医局を辞められるか分からない」と回答が返ってきた。退局の意向を伝えた際に、次年度の派遣先を決定している旨話があった様で、教授から厳しい圧力を掛けられたとの事だった。
先生は非常に悩まれていた。何か解決する方法は無いものかと。私は一旦状況をお伝えするべく、病院へ連絡した。病院側の反応も、「弱りましたね」との回答だった。病院としては大学医局との関係もある為、事を荒立てるのは本意ではなく、先生が円満に退局する事を願っていた。
数日が過ぎ、先生へ状況をお伺いしたが状況は変わっていなかった。どちらかと言えば、医局人事が発令される日が近づいており、最悪の状況だった。先生は教授との最終交渉に望む決意を固めた様で、改めて数日待って欲しいと仰られた。
その後、数日が過ぎ先生から電話を貰った。教授との話し合いの結果だった。その内容は、退局が決まり、何とか円満に退局に至ったとの内容であった。数時間に及ぶ話し合いが持たれた末、最後には先生の内科医への転科の思いが伝わった様である。
先生も晴れて退局が叶い安心した様子だった。病院側へ教授との話し合いが無事に終了したことを伝え、入職へ向けた手続きを進めたい旨お伝えした。諸条件を記載した雇用契約書の案を作成させて頂き先生へ内容の確認をお願いした。
内容としては、提示頂いた週5日勤務 当直月2回 年俸1,700万円 内科医として迎えられた。2013年4月新たなスタートを切ったのである。現在、先生は充実した日々を過ごされ、毎日内科医として新たな挑戦を行っている。医局人事を離れ転科した事で医師として再スタートしたのである。
完
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