最後の決意(上)
2013年07月15日 コンサルタントT
4月下旬、70代の精神科のA先生から問い合わせの電話があった。
「転職を考えていますが、精神科の案件があれば紹介してほしい」という内容だった。
早速、A先生の詳しいご希望をお伺いする為、面談の機会を頂ける様お願いすると、A先生はすぐにご自宅での面談の時間を設けて下さり、翌日A先生のお話を伺うことができた。A先生は、長年第一線で活躍されているだけに、お年を感じない非常に立派で貫禄のある先生という印象を受けた。A先生は現在、非常勤として週2~3日、自宅近くのK病院に勤務され、お休みの日は読書やお庭のお手入れをされ、ゆっくり過ごされているということだった。ではなぜA先生のご年齢で、非常勤勤務から常勤勤務へご転職をお考えなのか疑問に思い、話を伺った。A先生は、「若い頃、外科医として手術や解剖、研究などに携わっていたが、60歳を過ぎた頃、精神疾患のある患者を対応した時、これまでの経験とは全く違うスキルが必要であることを強く感じ、その時のことがきっかけで、精神保健指定医の勉強を始め資格を取得した。実際の精神科医の仕事は長期的に患者の人生に寄り添う姿勢が必要であり、緊急時の対応も外科の時に経験してきた内容とは全く違うもので、初めは戸惑うこともあった。しかし精神科医として経験を重ねる中で、精神疾患で苦しんでいる患者を助けたいという気持ちが強くなった」というお話をされた。
また、A先生のご実家は代々医師の家系で、A先生が14代目。A先生の御子息は、医師として立派に活躍されており、お孫様も医師国家試験合格に向けて勉強を続けていらっしゃるとのことだった。A先生は、「孫が、医師として活躍している姿を、現役の医師として、成長を見届けたい」という、ご家族に対する想いも、今回転職を決意された理由であった。
A先生からのご希望は週4日勤務で年俸は1,600万円。さらにA先生は「勤務の内容や働きやすい環境と人間関係を重視して考えます」と仰っていた。実際に会って話を伺った中で、「今回の転職が年齢的にも人生で最後だと思っています。宜しくお願いします」というA先生の言葉に、A先生の想いや希望に応えたいという気持ちが強くなった。そこで、事前にお伺いしていた条件を参考に準備した3つの求人をご提案させて頂き、その中からA先生はまず通勤の負担を抑えたいということで、ご自宅から一番近いI病院の求人が、気になられた様子だった。
早速、A先生が実際に勤務された時のことをイメージしやすいよう、I病院に訪問し、事務長からお話を伺った。常勤の先生方の人数や年齢、出身大学や勤務体制、医局の様子や病棟の様子など、ホームページからは得られない病院の基本理念に対する取り組みなど、病院の魅力をA先生にしっかりご説明出来るよう、出来る限りの情報を集めた。
また、A先生の通勤手段や距離を考えながら、I病院以外の求人についても各病院に訪問し、A先生が納得される求人を提案出来るよう準備を重ねた。
A先生とは、新しい情報が入る度に連絡を取り合うことができた為、A先生の最後の職場を見つけ出してみせるという想いを胸に、1つ1つ確認を取りながら準備をしていくことができた。
そんな折、A先生から面談の際にご紹介したI病院について連絡が入った。
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