ドクター転職ショートストーリー

迷い、そして原点へ(上)

2011年7月15日 コンサルタントH

Y先生がリンクスタッフに登録されたのは5年前。当初は週末のアルバイトをお探しで、月に1~2回弊社からの紹介先で勤務を頂いていた。
しかし2年前、片道2時間掛かる常勤先への通勤と、週2回の当直などによる肉体的な疲労が続いたことで体調を崩され、「しばらくアルバイトはできない」との連絡が入った。

それから数ヶ月後、私はY先生のその後の体調が気になり、連絡を入れた。「体調は回復したがやはり疲労は大きく、自宅周辺で転職を考えたいので、情報を頂けませんか。内科ではなく、精神科への転科を目指したい」

精神科への転科を考える先生は多い。精神保健指定医の資格が優遇される現状で、その取得を目指し、先々の安定へと繋げたいという声も聞く。Y先生も同様であった。50歳を前にした転科への想い。Y先生の意志は固く、私もそれに応えるため、直ぐに案件の確認を進めた。
年齢的な面での不安はあったが、Y先生の自宅から通勤30分程度の距離に、幾つか該当する求人が見つかった。「年俸のダウンはやむを得ない」という先生の言葉はあったが、それまでの年俸は当直を含め2,000万円ほど。これに対し、先生へ提案を予定していた精神科のA病院の年俸は、非指定医で1,500万円に満たない。これではY先生の生活にも影響が出るのではないかと不安に思い、再度Y先生の経済的な状況を深く伺った。「500万円の年俸ダウンは、住宅ローンや車の支払い、受験を控えた子供の教育費など、大きな支出を見据えた上で考えても、生活に支障をきたすほどではない」Y先生の言葉に、私もホッとした。転科による年俸のダウンも、Y先生の妥協できる範囲であれば、自信を持って提案できる病院である。

早速、そのA病院の勤務内容・条件・福利厚生面などの詳細をまとめ、Y先生に確認頂いた。自宅から車で15分、週4.5日の勤務で当直は月に2回。全てを含め年俸1,500万円。精神保健指定医の資格取得後には、当直料を含まず1,700万円を保証するという内容であった。
「勤務にゆとりがあり、トータル的に考えても悪くはない病院ですね」先生の言葉に安心したものの、どこか不安げな様子を感じた。「Y先生、気になられる点があれば、どうぞ仰ってください」その問い掛けにY先生は本心を打ち明けて下さった。

その内容は、3年後を目処に開業を目指しているというものであった。私はじっくりとY先生の想いを伺った。「現状の生活であれば1,500万円で構わない。ただ、開業に向けて少しでも蓄えたい」Y先生の想いをお聞きした翌日、直ぐに提案先のA病院へ訪問し、条件の相談を行った。理事長と直接お会いし、Y先生の率直な想いを伝え、どうにか年俸の上乗せが図れないものか検討頂いた。その結果、当直を週1回とした上で、毎週6時間の居残り診療をプラス。また規定にはない住宅手当を支給して頂くことで、年俸の総額を1,750万円とする回答を受けた。これにはY先生も十分満足され、早期の面接設定を求められた。

1週間後に設定した面接では、Y先生も自身の考えを細かく話され、A病院の理事長も、それを温かく受け入れて下さり、終始和やかな雰囲気で施設見学などを終えた。温厚で前向きなY先生に対する理事長の印象は大変よく、「是非、当院でご勤務下さい」と仰った。Y先生にも不満な点はなかったが、「2週間程考えさせて下さい」との連絡を受けた。とはいえ、他に転職の候補先を考えておられるわけではなく、決断に問題はないと思われた。

次へ続く

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