日本人の起源、縄文人 その(II) 骨は語る|神津仁の名論卓説

 岩手県大船渡市に在住のAさんが発見されたのは、東北といっても日が高い日中は燦々と陽が照りつける、三陸鉄道南リアス線綾里駅前に広がる台地の片隅だった。片岡警部が額の汗を拭いながら、東京から派遣された検死官の北村と病理学者の鈴木に話しかける。片岡「何歳くらいの人ですかね」北村「恐らく30代後半、骨格から見て女性ですね」片岡「歯が欠けてますね」鈴木「この地域では、成人になる時に歯を折る習慣があると聞いている。下顎の左側の奥歯、第二小臼歯から第三大臼歯まで、歯槽の吸収があるから歯周病で脱落しているね」北村「外耳道に変な骨増殖がありますが。。」鈴木「外耳道骨腫、いわゆるダイバーズイヤー(diver’s ear)だね。潜って海産物を取ってた人かも。。」北村「あまり見ない首飾りをしてますね」片岡「これはイノシシの犬歯や切歯、動物の骨などからできている、当時としては大変立派な首飾だよ」

 ここまで読んで、あれ?と思った読者も多いと思う。土曜サスペンス風に、死体が埋められた事件現場の話に置き換えて少し脚色してみたが、Aさんというのは、実は宮野貝塚遺跡から発見された「F地区出土人骨」である。「縄文人の死生観」の著者の山田康弘氏がこの人骨を見て詳しく分析していて興味深い。

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