ドクター転職ショートストーリー

地域医療(上)

2016年7月15日 コンサルタントT

60歳代後半のA先生から弊社の転職サイトにお問い合わせが入ったのは、2月の初めのことでした。お問い合わせフォームには、ご経歴や資格などとともに診療についての希望もわかりやすく記入されており、ぜひとも担当させていただきたいという思いでご挨拶のメールをお送りしました。すぐに先生からご返信をいただき、ご面談のお約束をさせていただきました。

ご面談当日、お待ち合わせ場所の喫茶店に、とても姿勢が良く、サイズのぴったり合ったスーツを着た紳士が現れ、A先生に違いないと思いご挨拶をさせていただきました。先生は、「紹介会社に登録をするのは初めてなので勝手がわからず、何からお話すればよいでしょうか」と率直にお伝えくださり、こちらからご経歴や現在の勤務先の病院についてご質問をさせていただきました。
また、私が思った先生の第一印象をお伝えすると、「医者はある意味サービス業ですよ」とおっしゃって、「患者さんに信頼してもらうためには、まず話したいと思える見た目が必要だと思います」と続けられました。
そしてなぜ転職を決断されたのか質問をすると、「今まで大学の医局派遣で勤務を続け、定年退職をした後もそのまま病院に残って勤務をしてきました。ですが、60代後半という年齢になり、医師人生の最後を原点である地域医療に捧げたいと思うようになったのです」との答えが返ってきました。先生の思いを叶えるお手伝いをぜひさせていただきたいとお伝えをして、ご面談の場を後にしました。

日本の医療は、2006年度の診療報酬改定で7対1入院基本料が設定された結果、7対1看護基準の病院が急増しました。2014年度、16年度の改定で要件の厳格化が打ち出されましたが、現状は未だ過剰状態です。また医師において、このような病院で研鑽を積むことを希望される方が多いのも事実です。A先生がご勤務をしていた病院も高度急性期病院でした。ですが、2025年に向けて、必要となるのは病床の再編であり、病院依存から地域へのシフトです。先生の思いをお聞きして、一人一人ができることは限られていますが、できることを確実に進めていくことが大切なのだと改めて考えさせられました。

その後、地域医療ということで、一般病棟・療養病棟・回復期病棟を持つ病院の案件をご紹介させていただきました。外来は一般内科担当で病棟は療養がメインとなる案件でした。先生からの回答は、「今までの病院とあまりにも違いすぎるので務まるか不安です」とのことでした。先生は消化器内科が専門で、一般内科という点にも大きな不安を持たれていたのです。その地域に必要とされる医療は一般内科でしたが、先生の今までの経験を生かして、貢献していただける道が他にもあるはずだと思い、こちらの案件は一旦白紙に戻し、すぐに次の案件探しに取り掛かりました。

次に先生に提案させていただいた案件は、高度急性期の病院での消化器内科担当のものでした。専門外来があり、今までのご経験も十二分に発揮していただける病院です。チーム医療、地域医療を推進している病院でしたので、先生にもご興味をお持ちいただくことができました。しかし、いざ面接という段階になって先方よりやはり年齢の部分で難しいとの判断がされたと言われました。せっかく先生にご興味をいただいて経験も生かしていただける案件なのに、と思いながら先生にお詫びをすると、「こちらの病院はかなり忙しく、やはり若い医師でないと勤まらないでしょう、お気になさらないでください」と温かいお言葉をいただきました。先生のお言葉をありがたくいただくとともに、次こそは必ずご納得いただける案件をご紹介しなければと、後がない思いで取り掛かる決意を固めました。

次へ続く

コンサルタント手記バックナンバーへ

おすすめ求人