ドクター転職ショートストーリー

母は強し!!「家事は趣味」(下)

2016年01月01日 コンサルタントN

先生と直接面談させて頂いてから1か月後、年も明け、いよいよ2回目の面談日を決めさせて頂く時がやってきました。事前のメールで正月に兄妹で話し合い、今後の方向性が『ぼんやりと見えてきた』との話しも聞いていた為、早速2回目の面談日を決め、指定の日時にお会いさせて頂きました。先生からは兄妹で話し合った結果、今後の時代の流れより先生の精神科としてのスキルは必ず必要であること。その上で、内科のスキルは必須では無いにしてもある程度持っておいた方が望ましいという結論でした。

この結果を伺い私は大変失礼ながら先生に「ある程度の内科のスキルをもつというのは非常に難しいですが、現時点で先生は自信がおありですか?」と率直に伺いました。先生の回答は「キャリア15年で精神科のみの為、自信はありません」との事でした。
ここで私と先生の間で1つの課題が見つかりました。それは『実家を兄妹で運営する際に先生には内科のスキルが必要である』と言う事です。つまりそれは『転職(=転科)が必要である』事を意味します。

もう一つの問題(『転職後、最短で3年で退職』)に関しては、コンサルタントである私から医療機関に対する交渉事であった為、任せて頂く事になりました。先生も現在担当している精神科の患者の引継には時間がかかる為、早急に今の勤務先に退職の意志を伝える旨、お約束を頂きました。

ここで先生との面談時間がタイムアップ(2歳のお子様のお迎えの時間)となった為、今後も引き続きメールや電話で医療機関のご提案をさせて頂き、先生からの質問や要望を伺いながら進めさせて頂く旨を伝え、終了しました。

1月3週目、先生に前述した希望条件を満たす提案可能な医療機関の候補が4件見つかりました。
医療機関の選定には、『内科での入職』『内科教育制度』に対しては必須の要件である事、転職後限られた期間の中で内科のスキルを身に着けることができる医療機関であることを念頭に情報収集致しました。

早速先生に報告させて頂いた所、その中の2つの病院に興味を示されました。

1つは『総合内科後期研修』の扱いでの入職のもの。後期研修である為、研修プログラムも万全で先生の転職の1つの目的は間違いなく達成できます。問題はプログラム期間が3年の為、研修終了後退職しなければならないことと、後期研修医の為、給与が現在よりも30%も減ってしまうということでした。

もう1つは『精神科』として入職して頂き、兼務で『内科』を勉強して頂くというものでした。この勉強に関しては専門プログラムがある訳では無くOJTによるもので、外来、病棟管理を他の内科医師と共に診ながら、学ぶというものでした。精神科での入職の為、待遇は今と同等か10%ほど増える計算でした。又、通勤も現勤務先に比べ、半分ほどで通う事が出来、かつ、自信のある精神科に携わる事で勤務に対するストレスの緩和、自信の維持が出来るメリットがございました。

先生はこの2件の求人に対し、どちらにするのか非常に迷われておりました。

私はこの時点で本来の目的以外の悩みが新たに発生した事に気づきました。それは『自信のある精神科にも携わる事で勤務に対するストレスの緩和、自信の維持が出来るのでは無いか』と言う点です。実際に転職となると様々な不安から新たな悩みも出て来るため、ここは指摘せず、先生に「この2施設を見学に行きましょう!見学に行き、実際に雰囲気を感じ、話しを伺いましょう!」と伝え、先生から承諾を得られた為、面接と施設見学のセッティングを行いました。

2月2週目、第1回目の面接、施設見学を『総合内科後期研修』での入職で、教育体制も万全な医療機関で行いました。
そこで医療機関より39歳での転科に対する驚きと経緯を聞かれ、それに対し、先生は事実通りに話をされました。又、子どもの育児・家事との両立も話をされ、その上で「入職後、迷惑をかけずに業務が遂行できるか?」という不安を直接医療機関へぶつけられました。
医療機関からは『女性医師に対する子育て支援制度が非常に手厚い病院であること』を先生に説明され、この説明に先生も心配ごとが解消されたと話されておりました。
その後、研修の内容、スケジュールを伺い実際に3年後に先生自身がどうなっているのかを非常に分かりやすく説明を頂きました。

面接終了後、先生より「全ての迷いが吹っ切れました」との言葉を頂き、2歳のお子様のお迎えの時間もあった為、この日の面接は終了しました。

翌日、面接後の感想と2月3週目にもう1つの医療機関への面談のアポイントも取った旨を先生に報告させて頂いた所、先生よりもう1つの医療機関はキャンセルしてほしい旨と併せて、昨日の医療機関への入職を決めたと力強いお返事を頂きました。

先生と初めてお話しをさせて頂いたのが、11月下旬。その後、年末年始を挟んで、2月2週目に転職先が決まりました。この期間が長いのか、短いのか、人によってその期間の過ごし方により大きく違うと思いますが、先生より「非常に充実した期間を過ごさせて頂きありがとうございました」とのお言葉を頂き、感謝し、感激した事を覚えています。

2月下旬、先生と契約締結の為、最後の面談をさせて頂きました。変わらず4時頃に起床し家事などをこなされているのですかと尋ねたところ、「母親としての責任で、何十年もこの生活をしてますから。ルーティーンであり、ある意味趣味ですね」と笑いながら話して下さいました。

新しい勤務先へは4月1日入職で、3月には現勤務先の有休消化をするとの事で、「しばらくの間はゆっくりとした時間を過ごせそうです」とも話してくれました。私は「その期間はショッピングや映画鑑賞など、趣味に時間を費やす事が出来ますね!」と伺ったところ、「趣味は家事ですから!」と一層にこやかな表情でお返事を返して下さいました。

先生が3月の有給休暇期間中にどの様な『趣味』に時間を費やしていたのか定かではありませんが、4月の入職後以降は従来通りのルーティーンに戻り4時に起床し『趣味の家事』をこなしてからのご勤務をされている事と思います。

この度担当させて頂いた先生は女性医師で常勤希望、更に家事と子育ての両立に加え、実家を継承する際に内科のスキル(=転科)が必要との事で、様々な事情が絡まっていました。しかし、その1つ1つを項目毎に分け、解決し、医療機関と交渉する事で先生のご希望に則した条件を引き出せる事を改めて学びました。併せて、先生のご希望に則した医療機関の提案と、交渉の為には先生のご希望を的確に引き出し、先生の意を汲むことが如何に大事であるかを学びました。この度の貴重な経験を以降のコンサルティング業務に活かすと共に、担当させて頂く先生には、転職までの期間は充実した時間を過ごして頂けるように取り組んで参りたいと考えております。

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