ドクター転職ショートストーリー

笑顔の束(下)

2014年07月01日 コンサルタントO

事務長からのお電話では、諸事情により理事会の承認が得られず、現在の施設長の退任がままならず今回のV先生のお話は無かったことにしてほしいとの内容でした。

直ぐにV先生に事の顛末のご報告と、急ぎ他の案件をご紹介する旨の連絡を入れました。V先生は「やっぱり、なかなか直ぐには転職先は見つからないのか」と少し意気消沈のご様子でした。私は改めて、何としてもV先生の就職先を見つける決意を固め、当社の求人情報のみならず、老健リストも含め約50件、ご通勤頂けるエリアの同じような規模の老健施設に電話を掛けました。翌日、ご希望エリア内の1件の医療機関併設介護老人保健施設より施設長の求人情報を得る事が出来ました。

早速、先生に連絡を取り、面接の場を設けて頂くことになりました。職員やコメディカルの方々からは、V先生のお人柄もあり大変大歓迎ムード。そして、緊張の理事長面接。理事長先生とV先生は、お互いに同年代同志でした。V先生はゆっくりとした口調ではありますが、噛みしめるようにしっかりと思いを述べられました。

理事長先生は黙って聞いておられ、そして、最後に一言「V先生、いつから来て頂くことが出来ますか?」、するとV先生は「明日からでも」。
すると、理事長先生から「明日、お待ちしております」と慢心の笑顔でお答え頂きました。

これは、私の主観ですが、おそらく理事長先生も奥様同様にV先生の思いを察して頂いたのだと思います。驚いたのは、同席していた私とその老健の事務長です。
明日からの入職となると、それまでに必要な書類など用意するべき事が数多くあります。
事務長も「こんな事は初めてだ」と、慌てながらも大変喜んでおられました。
とにかく、ご自宅で心配されている奥様に連絡をすると、採用か不採用なのかを気にするのが精一杯で、まさか翌日から勤務開始とは思いもよらなかったのでしょう、嬉しくもあり、でも心配といったご様子でした。その日の内に事務長の協力もあり、手続きは全て完了することが出来、無事に入職頂けることが出来ました。給与は週4日(週32時間勤務)で税込年俸1,000万円と相場よりやや低めでしたが、医療法人が経営母体ということもあり、関連病院のバックアップ体制もしっかりしていることがV先生の心を捉えたご様子でした。

そして1週間が経ち、ご様子をお伺いする為、ご自宅にお電話をさせて頂きました。
奥様が電話を取られたので、V先生のご様子をお聞きしてみると、「この20数年間は笑顔で勤め先の事を話す事など全く無かったのに、久しぶりに嬉しそうな顔で帰ってきて、仕事の内容を聞かされましたよ」と、仰る奥様が一番嬉しそうでした。

それから、おおよそ3ヶ月が過ぎましたが、ご様子伺いを兼ねてお電話差し上げると、毎日、奥様が望んでおられた笑顔でご出勤頂いているとのお話です。
「こんな、主人の笑顔を再び見る事が出来るなんて本当に思っていなかった」と、日頃の励みになるお言葉も頂戴する事が出来ました。

今回のV先生のご入職に携わらせて頂いて、医師同志の使命感、そして、医師を中心に家族の方々、医療スタッフの方々など同じ思いを幹とすれば、その共感は笑顔になる結果が引き出せると確信しました。
これからも、関わる方々を同じ思いの幹に束ねられるコンサルティングに心掛けていきたいとの思いを念頭に置き、その束を一束でも多く作れる様に、日々、業務に励んで参りたいと思っております。

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