ドクター転職ショートストーリー

受け継がれる思い(下)

2014年03月01日 コンサルタントS

今回の院長募集案件を進める上でのポイントは2点あります。
将来的に継承予定の無い雇われ院長の候補者を早急に探す事と、もう一つは勤務開始時期が来年1月と猶予が無い事です。

候補者をお探しするにあたっては、過去当社からご勤務された先生方から声を掛けて、可能な限り面談の上で事情を説明して検討頂く事が、初めにとるべき対応と考えました。その内、特に奥様の記憶に残る先生なども伺いしました。

また、奥様には勤務開始を少しでも先に出来る様に、現管理医師の先生に相談して頂く様にお願いしました。奥様からは、現管理医師の方とのお付き合いも古く、義理堅いお人柄なので、大学勤務が始まるまで、何とか延長をお願いしてみますとのお返事でした。

翌日、Aクリニックに過去勤務された先生方を確認すると、十数名の先生のお名前が上がりました。
先生方にお電話でお話をさせて頂くものの、どの先生も常勤先を持っており、転職の希望はないとのお返事ばかりを頂いておりました。

その様な状況の中、B先生からAクリニックの匿名募集案件に問い合わせが入りました。
B先生からのお問い合わせには、『こちらは、以前私が勤務した事があるAクリニックの募集案件でしょうか?』とあります。B先生のお名前を確認すると、確かにAクリニックで複数回ご勤務されている、奥様の記憶に残る先生の内、直接お声掛けをした際にお断りされた先生でした。

早速、奥様に連絡を取り、B先生からお問い合わせ頂いた事を報告し、B先生についてのお話を伺いました。B先生とは、前院長が亡くなられた翌日にご勤務される予定でしたが、急逝によりご勤務をキャンセルさせて頂いた事があったそうです。その後、ご勤務頂いた際には、奥様が前回の急なキャンセルのお詫びをし、院長としてのご勤務も直接お声掛けをしたものの、『今の勤務先で責任ある立場にあり辞められない』とお断りされたそうでした。

B先生からの問い合わせに奥様は大変喜ばれて、B先生にお越し頂けるのならばと、当初伺っていた提示年俸より特別に増額した年俸提示の許可を頂きました。

B先生とは、日曜日に自宅最寄駅でご面談のお約束を頂いておりました。
ご面談時にB先生は、Aクリニックの事はお断りした後も気にされていたものの、現勤務先の病院で副院長職にあり、オペもされる多忙なご勤務状況にいらっしゃいました。
しかし、Aクリニックでお声掛けされた際には全く考えもなかったそうですが、50代半ばで体力的を考えると、オペ無し勤務や、クリニックでの院長職にもご検討を始めておられました。

私は、Aクリニックの状況、御嬢さんの思い、奥様の決意をご説明させて頂きました。
B先生は大変共感されて、少し考えさせて欲しいとのお返事を頂きました。現勤務先を辞める話、家族への説明など、今まで具体的に話をした事が無く、じっくりと考えさせて欲しいとの内容でした。

私は、奥様に許可を頂いた特別提示年俸を伝え、その提示金額でB先生さえ宜しければ、採用内定をお伝えする許可も頂いている事もお伝え致しました。B先生は、『そこまで私を評価して頂いているのであれば、奥様とお会いした上でお引き受けしたいと思います』とのお返事を頂きました。

その2日後の夜、AクリニックでB先生、奥様の3人で面談致しました。
それぞれ、お互いに聞き辛い内容は事前に確認していた事もあり、話は終始スムーズに進みました。奥様からは『現院長は2月末までなら勤務延長の承諾を得られる可能性がありそう』とのご説明も頂きました。

帰り際、受付スタッフがB先生へ『先生いつから来て頂けますか?』との声掛けに対して、『縁が有ったらね』と返事をされておりました。私には院内に入ってから、B先生と挨拶する各コメディカルのやり取りを見ると、長年一緒に働いたスタッフ同士のやり取りに見えておりました。

駅前での別れ際には、B先生から『御嬢さんへ受け継がれる思いを私もお繋ぎしたいと思います』とのお返事を頂きました。その後は、Aクリニック現管理医師の勤務延長、AクリニックへB院長先生の入職契約締結、B先生の現勤務先2月末退職と全ての準備が整いました。

この3月、それぞれの思いを胸に、Aクリニックは新たなスタートを始められます。

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