ドクター転職ショートストーリー

不思議なご縁(下)

2011年6月1日 コンサルタントO

翌日、産婦人科病院から電話があり、「週4日で検討するので、一度先生に直接お会いできませんか」とのことだった。私は嬉しくなり、すぐにS先生に連絡をしたところ、S先生も快諾してくださった。しかし、問題は勤務日数だけではなかったのである。勤務は婦人科オペの麻酔と、帝王切開など、出産の麻酔がメイン。緊急麻酔が必要なことも出てくる。「オンコールは外してもらえますか」先生は当然、そう希望された。電話で事務長にお願いをすると、「院長先生と相談させてください」と答えが返ってきた。後日、「オンコールについては面接の場で直接先生に相談させて頂けませんか」と事務長から連絡が入った。私は少し嫌な予感がした。完全に外してもらえるのであれば、すぐにその返事を頂ける筈である。もしかしたら、今回の面接はS先生にとって、無駄足となってしまうかもしれない。「先生に相談させてください」そう答えて私は受話器を置いた。

S先生には、そのまま説明した。全ての事情を聞かれたS先生がどのようにお感じになられたのかは分からないが、それでも面接を快諾してくださったのである。

院長室の扉を開けると、院長先生は優しそうな笑顔でS先生と私を迎えてくださった。「麻酔科のS先生です」私が紹介すると、S先生も挨拶をされて面接はスタートした。「S先生には中学生と小学生のお子さんがいらっしゃるのですね?」 院長先生はそんな会話から始められた。「私も高校生の子供がいるのですが、受験で本当に大変でした」その言葉にS先生の顔も綻んだ。「上の娘も中学受験したのですが、本当に大変で私の方が参ってしまいそうでした」 面接は終始、和やかな雰囲気で進んでいった。S先生のご経歴と経験されたことなどをお話しながら、なぜ麻酔科医としての仕事を続けていきたいのかという理由に「麻酔科医は麻酔を続けることで多くの能力を身につけることができ、そしてその能力を身につけることで、麻酔に加えていろいろな領域でいろいろな役割を果たすことができるようになります。また麻酔科医は多くの分野で応用が利き、集中治療、救急医療、ペインクリニック、緩和医療、いろいろな部門で活躍できるとてもやりがいのある仕事です」先生は、はっきりとお答えになられた。それから、勤務内容の確認をし、そして話題はオンコールへ。平静を装いながらも、私の心臓は早鐘を打っていた。しかし、意外にも院長先生はにっこり笑ってオンコールを免除してくださったのである。「先生には末永くご勤務頂きたいので、オンコールの件は何とかしましょう」S先生は結局、週4日勤務、当直・オンコールなしの1,200万円で翌月入職された。

入職して2か月ほどが経ち、S先生に電話をしみると、職場の雰囲気がとても良く毎日楽しく仕事をされているとのことだった。そして以前よりもお子様たちとの時間が増え、ご家族とも楽しい時間を過ごされていると伺い、私は嬉しくなった。求人をご案内させて頂く際、先生のご希望に添うというのは当たり前である。プラスでそのS先生の雰囲気に合う病院をご案内差し上げることが大切なのだと、今回、改めて考えさせられた。

そしてS先生が入職されて1年後……
偶然にもS先生が入職された産婦人科病院で、私の友人が2人目の子供を出産したのである、しかも帝王切開で。「私、麻酔科の先生ってすごいなぁと思ったの」何も知らない友人はそんな事を私に話し始めた。「怖かったけど、麻酔科の先生が『お母さん、大丈夫ですよ。こっちみていてくださいね』って言ってすごくリードしてくれて、それに従っているうちに麻酔がかかっていて、メスで切られているのも全然分からなかった」子供の顔を覗き込みながら、彼女は嬉しそうに笑っていた。「その先生の名前ってわかる?」さりげなく聞いてみると、やはりS先生だった。
人の縁とは不思議なものである。今後も、色々な先生との『ご縁』を大切にしていきたいと思う。

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