5番目のエージェントの役目(下)
2011年5月1日 コンサルタントA
T先生からの面接日変更の連絡は、今週予定していた他社エージェント紹介のC病院の面接が午後からなのでB病院の面接をその日の午前中に入れてもらえないかというものだった。
T先生は候補を2件に絞り、1日で2件面接をしてどちらかを決定し、12月中に入職先を決めておきたいそうだ。早く新しい入職先を決め、現職の退職手続きや、受け持ち患者様のことを考えてのことであった。とは言っても、面接は2日後。「なんとかしてみせます」と伝えB病院へ連絡、事務長も「明後日ですか?」と少々驚かれたが、T先生の転職活動の状況をお話し、「こちらも何とかしますので、先生のご都合に合わせます」と即了解を取り付け、T先生へ伝えた。
そしてT先生との面談からわずか1週間、B病院のご協力もあって面接を迎えることができた。面接は理事長、院長、事務長が対応、終始和やかに進行していった。理事長からは「T先生さえ宜しければ、是非ご入職ください」とその場で言われるなど、良い雰囲気の中で面接は終了した。面接終了後、T先生の率直な印象を聞くと「事前に伺っていた通りでしたね。病院の雰囲気なども想像通りです。勤務条件も希望を満たしているので前向きに考えます」とのことだった。
ただ結論は、午後からもう1件C病院の面接があるので、それを踏まえて家族と相談して決めるということだった。T先生と別れた後、B病院の事務長に電話し、感想を伺ったところ、「理事長も言われていましたが、こちらは是非T先生に入職をお願いしたい。ただ言われていた通り、午後からの面接の病院の件は気になります」とのことだった。そして事務長は最後に「こちらもT先生入職のため、できる限りのことはします」と心強い言葉を頂いた。C病院の面接の状況によっては年俸の相談をさせて頂くことを伝えた。
そして夕方にもう1件の面接が終わったT先生に連絡を入れた。面接の感想を聞くと、「C病院の院長先生とは専門も同じで話が盛り上がりました」と仰りながらも、「週4.5日勤務はしょうがないと思っているが、内0.5日は他の関連病院に手伝いに行って欲しいとお願いされた」とのこと。手伝いの内容や場所が未だ不明確なところを心配されていたが、エージェントからは内々に口頭で年俸は1,600万円と提示を受けたそうだ。T先生にB病院の意向を伝えたところ、「C病院の最終的な結果が出てから早急にお返事します」と言われた。
翌日、早々にT先生から電話が来た。「昨夜家族と相談し、C病院の面接結果は出ていませんが、B病院に入職を決めましたので、入職に向けて手続きを進めてください」という電話だった。
急転直下の出来事だったので「C病院の結果は待たなくてよろしいのですか?」と質問すると、「確かにそうかもしれませんが、C病院は面談の中で初めて知らされた0.5日のお手伝いの件など不明な点が多い。エージェントであればその点も事前に明らかにしておくべきですよね。その点でB病院は不明な点は全て面接の前に聞いていたので、面接では自分の目で確かめるだけでした」
T先生には契約書の準備を進める旨を伝えたところ、「実は他のエージェントは勤務条件等の質問をしても回答が来るまで時間が掛かって、正直やきもきしていた。その点リンクさんはほぼその日に回答がもらえるなどストレスなく進めることができた。契約書をお待ちしています」
そして、次週の先生の研究日の日に契約書を締結することとなった。
その間B病院と契約書の内容をまとめ、T先生との契約締結の日。その日は奇しくも当初B病院との面接を予定していた日だった。T先生とお会いしてから2週間が経っていた。冒頭、契約書の確認の前に最終的な勤務条件が、週4日勤務・1,660万円・当直無しで確定したことを伝えた。実は契約書をまとめる過程の中で、B病院からは当初年俸1,550万円の提示だったが、ほぼ即決で入職を決められたことや、C病院からの提示された年俸の件を率直に事務長・理事長へ伝え、年俸交渉をしていた。「T先生は決して年俸だけで判断するような方ではありませんが、先生のお気持ちに応えて下さい」と伝えた。当初は難色を示したものの、T先生の入職への意志を強くお話し、最後は理事長から「分かりました。T先生には気持ちよく入職して欲しい。但し入職日だけは守って下さいね」と年俸アップに成功していた。これには先生も「正直なところ年俸の件は言うべきか迷っていたのですが、ここまで配慮してもらい、感謝しています。速やかに退職の手続きに入ります。入職日は必ず守ると伝えて下さい」と大変喜んでくれた。
そして契約書の締結も済み、T先生と私は固い握手を交わした。T先生は、自身の転職活動を振り返って「5社目のリンクさんで決まるとは思っていなかった。やはりエージェントは対応力が大事ですね」と、仕事冥利に尽きる言葉だった。
T先生から戴いた最後の言葉は、「老後の仕事の面倒も見てくださいね。今後も長い付き合いをしていきましょう」と冗談交じりの言葉だったが、T先生から「今後も」と言ってもらえるとは思っていなかった。『5番目のエージェント』はT先生にとって1番になれた瞬間だった。
今回の紹介を通じて、医師だけでなく医療機関に対する対応力や、そのスピードの大切さというものを改めて再認識する機会となった。今後もより多くの医師と医療機関を繋げるエージェントとして更に成長していきたいと思う。
完
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