69歳の産婦人科医師の旅立ち(上)
2010年10月15日 コンサルタントT
A先生は今年69歳の男性医師で、四国の国立大学をご卒業され、インターンを経て約10年間医局人事で病院勤務の後、35年間産婦人科医院を開業しておられました。
A先生と私の出会いは1本の電話から始まりました。はじめて電話をした際、とても69歳とは思えない快活な話しぶりで、物腰の低い印象を受けました。電話でお話しているうちにA先生の転職背景が少し見えてきました。A先生の息子さんはシングルファーザーであり、息子さんの転勤で、小学生のお孫さんの面倒をみなければならない為、先月閉院し、神戸市へ引越しされたそうです。早速、ご自宅に訪問し面談の機会をいただくことになりました。
翌日、神戸市内の先生のご自宅にお伺いし、A先生のキャリアやスキル、ご希望などをお聞きしたところ、「もうこの年だし、産婦人科の分娩はダメだよ。今までのキャリアが活かせる婦人科外来や婦人科検診の仕事を探してほしい」とのことでした。
婦人科関連の求人は女医さんのご希望が多いことが私の脳裏をよぎったので、追加案として、先生の年齢も考えた上で老人医療分野の求人を提案してみました。するとA先生は「確かに私の年齢では婦人科関連の仕事は難しいかもしれないね。でも特別養護老人ホームは病院勤務と殆ど同じだから、オンコールがあったりして大変らしいよ。介護老人保健施設の方がいいな。給料は週5日働いて年俸1500万円は欲しいね。それと小学生の孫の面倒を家内と見なければいけないので、夜遅くまでは働けないよ」と返答されました。
早速、A先生の求人案件を探し始めました。A先生の通勤可能エリアの医療機関に、まる2日かけて片っ端から電話をしましたが、婦人科外来、婦人科検診の仕事はなかなか見つかりません。介護老人保健施設に絞って探したところ、神戸市内にある施設の施設長職の面接を受けていただくことになりました。
面接は先方の理事長、事務長、看護師長が同席され、先方の理事長がA先生と同世代ということで話がはずみ、感触は良好でした。ところが2日後、事務長から私への電話は「この間のA先生、良い先生だけどうちでは無理ですね。うちは介護老人保健施設なので、給与が年俸1500万円はとても出せない。内科の経験が豊富な先生でもせいぜい出せて1200万円だね」という回答でした。この件をA先生にお伝えしたところ、「そうですか。家から近いし、いいなと思ったけど。給料は年俸1200万円ではダメ。実はあなたには言わなかったけど、もう1社、他の紹介会社にお願いしている。そこからも紹介されているので考えてみる。だから、あなたもがんばってね」というお話でした。私も後には引けない状況でしたので、再度のご面談をA先生にお願いし、翌日、神戸市内のホテルのロビーで再会することになりました。
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