使命感(下)
2010年10月1日 コンサルタントY
当方からの「ご相談案件」とは別に、K先生の理想に近い案件を何とか提案させて頂くことだけを考え、提案案件の検索に数日間費やした。K先生の転職条件に見合う案件はいくつか見受けられたが、K先生が熱く語られていた理想的な健診用の設備とシステムが導入されている病院の求人情報を入手するまでには至らなかった。そこで、K先生が言われる健診用の設備メーカーを突き止め、メーカーへ直接問い合せ、K先生が勤務を希望される地域での納入先として「I クリニック」を紹介して頂いた。Iクリニックはグループ病院の健診専門のクリニックと分かり、すぐさま求人状況などを確認すべく問い合わせたところ、医師の採用については随時検討しているとのことから、その日のうちに訪問させて頂き、話を伺うこととした。
病院ではなく、「クリニック」ということと、若干、K先生の現状の年俸を下回る点以外、Iクリニックの募集条件はK先生の転職条件をほぼ満たしていたので、まずはK先生に紹介させて頂くこととした。もちろん、Iクリニックの特色としてK先生が理想とされている設備とシステムが導入されていることも合わせて紹介した。
翌日、K先生から私の携帯に連絡が入り、「是非ともIクリニックについて、話を進めてほしい」とのことを受け、IクリニックにK先生との引き合わせを打診、1週間後に面接を設定することが出来た。その後、面接までの間、度々K先生から私の携帯に連絡が入ることとなるが、その様相からは「Iクリニックに入職したい」とのお気持ちが日に日に増していることが伺えた。
そして面接日を迎え、K先生とはIクリニックが入居するビルのロビーで待ち合わせた。最初にK先生とお会いしたときの表情と変わりないように見えたが、何か勝負に挑むような鋭い表情を時折感じた。K先生には「とにかくリラックスして、ご自身のお考えなどを率直に提案されてみては」とだけお声かけをしたのだが、K先生からは「Iクリニックを勧めて頂いて、ありがとうございました。自分の理想の環境が整っているようですので、頑張ります」と、随分力のこもった返答であった。
「是非とも入職してほしい」と思いながら、Iクリニックの受付口に着き、応接室に通された。
面接にはIクリニックの理事長、院長、事務長が出席され、転科された経緯、転職に至った経緯、応募の動機などの質問がK先生に寄せられ、K先生も先方からの質問に丁寧に対応され、これまで熱心に取り組んできたことや失敗談など赤裸々に話された。また、外科医でもある理事長からは、「時間が許されれば、外科医としての経験を同グループ病院で奮ってほしい」との提案が出され、K先生も「そのような機会を頂けるのであれば、お願いします。但し、長い間、実戦から離れているので、オペの助手程度しか務まりませんよ」と答えられるなど、非常に和気あいあいとした雰囲気のまま面接は終了した。
Iクリニックをあとにし、K先生に感想を伺うと、その表情は非常に晴れやかに見受けられ、「思っていた以上にやりがいを感じながら仕事に取り組める環境があるものと感じた」と述べられた。そして「先方が宜しければ、こちらでお世話になりたい」との言葉を頂き、私も「K先生の熱心さや情熱などは十分、先方に伝わったので、きっと大丈夫ですよ」とお答えした。
当初、Iクリニックからは1週間以内にご返答を頂く予定になっていたが、面接の翌日、Iクリニックの事務長より連絡が入り、「是非ともK先生に入職して頂きたい。面接後、皆が即決して結論を出させて頂いた。K先生のお考えやご提案は当クリニックで発揮して頂きたい。」
電話を切るなり、思わず「ヨッシャ!」と自分のことのように喜ぶとともにすぐ、K先生の携帯に連絡を入れ、結果を報告した。条件についても、K先生の熱意などが反映されてか、当初提示された年俸の1,100万円から300万円も上積みされたのは、K先生に対する期待の表れでもあると感じた。K先生からの第一声も非常に感情をあらわにされ、「本当ですか!多少、自分自身の理想ばかりを話しすぎたと思い、昨夜はあまり眠れなかったんですよ」と話された。そして続けて「新しい環境で自分に与えられた『使命』を感じながら頑張ります!」との言葉に思わず、私も「K先生の志や
『使命感』などを参考に、私自身、コンサルタントとしての『使命』なるものを日々考えながら頑張ります」とお答えした。
面接をしてから3カ月後、K先生はIクリニックに無事入職され、しばらくしてからK先生の様子を伺うべく、私はIクリニックを訪問した。クリニックの入口付近で偶然にもK先生にお会いしたのだが、相変わらず朗らかで優しい表情の中に、非常に充実されている様子が見受けられた。
今後、様々な先生方との出会いの中で、自分自身がコンサルタントとしての「使命」とは何であるかを常に考え、より多くの方に頼りにされるようなコンサルタントになることを目指し、日々の業務に取り組んでいきたいと思う。
完
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