ドクター転職ショートストーリー

いい先生であれば・・・(上)

2010年1月15日 コンサルタントC

こんなにトントン拍子に話が進むとは予想さえしていなかった。

病院との雇用契約書に捺印した帰り道、Y先生が「Cさんにお会いしてから今日でちょうど1カ月でしたね。」と言われ気が付いた。某コーヒーショップで先生とお会いしたのはちょうど1カ月前のことだった。コーヒーがあまり好きではない私は「次に先生と会うときはコーラがあるお店で待ち合わせしよう」と飲み慣れないコーヒーを飲みながら考えていた。

以前から登録をいただいていたY先生は50代後半の精神科医である。私の前の担当者の記録を調べてみると、転職の意思はあるものの在籍している病院をなかなか退職できずに現在に至っているようだ。今の勤務先はかなりの大病院で、部長職に就いている。以前の記録には「細かい所まで考える先生」とあり、大雑把な私には苦手なタイプかもしれないと構えてしまっていた。

しかし実際にお会いしてみると、前担当者の印象とは違っていた。論理的な話し方をする先生で、非常に温和な人柄を感じ取ることができた。今まで転職に至らなかったのも優柔不断なのではなく、責任感の強さから来るものだろうと容易に想像がついた。今回、転職を再考したのは、医局人事絡みで近日中に今の病院に大量に医師が入るからとのことである。Y先生は転職理由以外にもいろいろな話をしてくれた。30歳を過ぎてから医学部に入学したこと、それまでは誰もが知っているコンピューター会社のサラリーマンとして海外勤務をしていたこと、医師としても海外で長く勤務して、今でも年に何回か海外に仕事で行っていることなどだ。会話の節々に出てくる英単語が綺麗な発音なのも納得である。後から知ったのだが、生まれはドイツとのことだ。
医師への道が遠回りで、経歴について話すのが恥ずかしいとおっしゃったが、それは謙遜というものだろう。Y先生の希望されるような転職先を何とか提案したいと思い、転職先への条件を聞いてみたところ、Y先生は以下の条件を挙げた。

① 年俸 1800万円以上
Y先生のキャリアがあれば病院側へ提案しやすいので、問題はないだろう。
② 役職 ヒラでなければOK
この点についても、年俸面と同じく問題はないだろう。
③ 海外での仕事
年1回、1~2週間ほどカナダで客員教授としての仕事があるため、そのときに休みが欲しい。Y先生にとっても病院にとってもスキルアップになるため、これも問題ないだろう。
④ MRIのある病院
Y先生はアルツハイマー患者の脳をMRIで見る研究をされているので、MRIがある病院を希望するとのことであったが、これは一番のネックになってしまいそうだ。

Y先生に提案するために何軒かの医療機関の求人情報を持ってきてはいたが、精神病院の求人を中心に考えていたため、MRIについては考慮していなかった。「これらの医療機関にMRIがあるかどうかと、他の求人案件も探してお伝えします」と言い、その日は別れた。
Y先生がこれまで転職に踏み切らなかったのはMRIがネックだったのだろうか。私としてはY先生と長いお付き合いをするつもりで、転職先を提案していこうと考えていた。

次へ続く

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