僻地への挑戦(下)
2009年2月1日 コンサルタントN
面接から3日後、A病院よりW先生の入職に際しての条件提示があった。
「週5日勤務、当直なし、オンコールなし、年俸2,000万円、年間住宅手当120万円、入居費用、赴任費用は全額支給」と、思ってもいない好条件での提示であった。
すぐにW先生に連絡を取り、病院からの条件をお伝えすると、大変喜んでいただけた。
そして入職に際しての雇用契約書をA病院とW先生に合意していただいたので、W先生の捺印をいただきにご自宅を訪問したところ、様子がおかしい。「現在の勤務先に退職願を提出したところ、受理してくれないので困ってしまって…。どうしたらいいのでしょうか」と困惑の面持ちであった。
「W先生はA病院で働きたいのですか、それとも現在のところで働きたいのですか」と問うと、「勿論、A病院です」とはっきりした言葉が返ってきた。
W先生の気持ちが固まっている以上、私としてはスムーズな退職をサポートするしかない。退職時に嫌がらせを受けるというようなケースも経験していたため、「理事長に話をするのではなく、事務長に話をするようにしましょう。それでも駄目であれば、連絡を下さい」とアドバイスさせていただいた。
その週の日曜日にW先生から連絡が入り、「昨日、正式に退職願を受理していただくことが出来ました。これでA病院にお世話になることが出来ます。お世話になりました」と、感謝の言葉を頂戴した。
「来週の休みを利用して、住居を確保するために家内と四国に行ってきます。向こうで骨を埋める覚悟でA病院に勤め、地域住民の方々に満足いただける医療を提供できるよう頑張ります。僻地での勤務は初めてなので、試行錯誤することになると思いますが、この縁を大切にします。」
入職されて6カ月経ち、W先生は僻地で頑張っておられる。
A病院からも「W先生に入職していただいて、地域の住民に満足いただける医療が提供できるようになって本当に良かった」と感謝の言葉を頂戴した。
「生涯現役」であろうとする医師の方々の意欲や熱意には驚嘆するとともに尊敬の意を禁じ得ない。
私もそうあらねばいけないと改めて感じる一件であった。
完
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