ドクター転職ショートストーリー

最強チームでの転職(上)

2008年12月15日 コンサルタントA

 「整形外科医をチームという形で求人募集されていませんか?」
 朝から晩まで、このような電話を1カ月掛け続けた。
 しかし「1人なら募集しています」、「2人まででしたら検討します」、「整形外科の先生3人は必要ないです」、「ベッド数が100床ちょっとしかないので、無理です」…などという返答が続く。
 病床数の多いほとんどの病院では、整形外科医は既に揃っているか、1人補充すれば充足するのが現状である。

 数十件の病院へ電話して、やっとチャンスが来た。
 「一度、話を聞いてみましょう」と前向きなお言葉を頂戴したのである。早速、その病院の採用担当の方とアポを取り、その日のうちに面談して頂いた。
 この病院は、県内で最も人が集まる場所にあり、病床数も300床以上ある。綺麗で立派な病院だが、現在は1人の整形外科医しかおらず、リハビリを中心とした治療しか行なえていない状態である。
 「話は良く分かりました。検討して、事務部長に話を上げてみます。」と病院から返事を貰った。

 それから、数日後に事務部長から「話を聞きたい」との連絡を頂いた。そこで私は「何が得意な病院なのか、どの部分の強化が必要なのか」など、病院について様々な角度から調べ上げ、それを頭に叩き込むという万全の体制で病院に向かった。病院では2時間半の長い話になった。
 病院が整形外科医をチームで受け入れれば、様々なリスクがある。このチームがどれだけ病院に貢献できるのかが、採用にあたっての最も重要なポイントになる。
 そこで、病院側が不安に思うであろう点を解消するために、先生方のこれまでの実績について、できるだけ具体的な数字を示した。また、この病院の周辺の交通事故件数も調べ、事故による搬送で計上できる保険点数など詳細なプレゼンを行った。結果として、事務部長が「是非、入職して頂きたい」とおっしゃるところまで、漕ぎつけることができた。

 「今度は院長先生に会って頂きます。その場ではチームを代表される先生のお話が伺いたい」との連絡があり、先生へ連絡し、院長先生との面接の日を迎えた。
 私も先生も少し緊張しながら、院長先生とお目にかかった。
 院長先生からは「整形外科の先生が病院に必要であることは間違いない。しかし、うまくいけばよいが、うまくいかなければ病院が潰れてしまうことになりかねない。また3人の先生方がチームで入職した場合、3人一緒に辞めてしまうことも考えられる。古い体質の病院なので、勤務している先生やコメディカルとうまくやっていけるのかということも心配だ。先生方に来ていただいて吉と出るか、凶と出るか、難しい選択である」とのお話を頂いた。
 そこで、先生が数値的な根拠を示して、院長先生に説明を始めた。入職後の1カ月、3カ月、6カ月、1年…と懇切丁寧な説明が続く。

 さらに先生は利益を上げるための多くの具体的な提案を行った。先生方が自ら近隣のクリニックや特別養護老人ホーム、他病院へ訪問して交渉すること、昼間の救急受け入れ体制と夜間救急の受け入れに関するマニュアルを作成すること、平均在院日数キープのための受け入れ先病院との交渉や後方病院を新たに探すこと、日当点を2500点から5000点にすることなどである。またプロジェクトを成功させるには事務方の協力が不可欠であることも熱心に話した。

 そういった具体的な説明に加えて、院長先生の不安なお気持ちを翻すのに効果的であったのは、先生方が若くて無限の可能性があること、学生時代からの友人でチームワークが抜群に良いこと、非常に明るく、前向きな考えを持ち、何より病院経営に非常に協力的であることである。

次へ続く

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