働く理由(下)
2008年11月01日 コンサルタントY
面接後は、事務長の案内でB病院の施設見学を行った。全ての病床が療養型のB病院は介護型と療養型が半分ずつ、外来患者も1日10人ほどという。呼吸器をつけている患者さん、鼻や口にチューブが入った患者さん、そのほとんどの患者さんがとても自立困難に見える。そんな患者さん一人一人に笑顔で声を掛けながら病棟見学を続けた。その姿を見た事務長が「一目見たときからA先生の優しい人柄が見えたよ!一日でも早く来て欲しいね。」と私に耳打ちをし、微笑んだ。
「一週間以内にお返事します。」と告げ、先生と私は病院を後にすると、帰り道でA先生から「B病院でお世話になろうと思います」という言葉を頂いた。そしてA先生から「来年1月からB病院へ行きます。」というメールが入ったのは、面接から3日後のことだった。
それから数ヵ月が経過した1月下旬、仕事で近くを通った私はB病院で勤務を始めたA先生を訪ねた。
「バリバリと患者を診るような医者になりたかったし、産休からの復帰後も内視鏡をもう一度やろうと思ったりもしました。
でも、夫が亡くなったことで、働くことと同じくらい、生きることも大事だと思ったんです。父親がいないことで子どもたちは悲しい思いをしているから、できるだけ私は、子どもたちの近くにいてあげたかったんです。それで当直がなかったり、少ない精神病院や療養型の病院に勤めてきました。最初はあまりやりがいを感じなかったのですが、身寄りがない、家族から疎遠となっているお年寄りの笑顔を見ているうちに、仕事は誰かのために役に立ってこそ意味があると考えるようになりました。この思いは今も変わりません。これからも、子どもたちや両親との時間を大切にしながら、働き続けていきます。」
先生は笑みを浮かべ、優しさに満ちた口調で語った。
ドクターだけでなく、どんな人にも人生の中で働き方を見直なおさなければならない時期は少なからずあるのではないだろうか。両親の介護、子育てなど。
「Hさんが私をB病院にめぐり合わせてくれたこと本当に感謝しています。ありがとうございました。」と言葉に出して喜んで頂けたこと、この一言こそ私がコンサルタントになって良かったと最高に感じる瞬間だ。
今後A先生のご活躍を祈念するばかりである。
完
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