理想と現実の狭間で(下)
2008年09月01日 コンサルタントK
今年の医師国家試験合格者は7733人。そのうち女性は2666人で全体の34.5%を占めた。女性医師の割合は1992年に2割、2000年には3割を超え、近年増加の一途をたどっている。今回ご紹介するケースは、患者様のために医療を志している大半の女性医師が、生活環境により自由を制限されてしまうといった、まさに宿命ともいえる典型的なケースではないだろうか。
そのA先生は、東京の私立医科大学を卒業され、今年36歳になる女性医師である。卒業後は小児科医として、病棟はもちろん、救急・手術・緊急手術など、大学の附属病院でバリバリ仕事をこなし、多忙の日々を過ごしておられた。その後、結婚を機に大学を退職され、週3日の非常勤で乳児検診などの仕事をされていた。結婚生活にも慣れた頃、A先生に転機が訪れる。ご主人の福岡への転勤が決まったことと、ご懐妊されたことだ。
東京での生活とはうって変わり、福岡では育児に追われる毎日となったそうだ。
当初は、女性としての幸せを噛みしめながら充実した生活を送っていたようだが、次第に、臨床から離れていることへの不安を感じ、臨床の現場に戻りたいと考えるようになった。
「子育てをしながら医療に従事したい!」
これが、当社に相談いただいたきっかけである。
病院探しが始まった。今のA先生の置かれている状況を考えると、仕事と育児の両立ができる外来中心の業務が理想だが、なかなか理解を得られる施設はなかった。先生も、新聞やニュースで「医師不足」の話題を目にする機会が多くなり、子どもがいるからといって自分だけが優遇されるようなワガママな勤務体系は通用しないだろうと、もどかしい日々を送っておられた。
そんな中、ある雑誌の記事が目に入った。それは現場を離れた女性医師が復帰しやすいように、院内保育は勿論、当直もなく、勤務時間や子供の体調不良時など、柔軟に対応する病院があるという内容で、実際に勤務されている2人の女性医師が紹介されていた。
更に、子育てをしながら働く女性医師の「今の勤務先を選んだ理由」というアンケートも掲載されていた。
- 託児所の有無
- 働きやすい環境作り
- 非常勤医師の受入れ体制
- 産休・育児に要する臨時休暇取得状況
- 男性医師の理解
重々理解しているが、そうそうそんな施設はない。
A先生と相談し、2つに絞ることにした。
託児所の有無と産休・育児に要する臨時休暇取得状況である。
完
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