ドクター転職ショートストーリー

ドリーム・カム・ツルー(下)

2007年04月01日 コンサルタントT

 面談は8月初旬の暑い日ではあったが、P先生はグレーのスーツにネクタイを締められて、約束の時間よりも20分以上早く待ち合わせ場所にこられた。当日は理事長と事務長との面談だったが、緊張されていたせいか、先生の方からはほとんど質問をされなかった。私が理事長に質問をして、先生の本来の特色である誠実さや勤勉性を強調する自己PRができるように誘導した。

 翌日、事務長にお礼の電話を入れた。事務長の話では、「クリニックに勤務する医師は、患者さまとの良好な関係を構築することが重要である。しかし、あまり1人の患者さまに時間をかけすぎると待ち時間が長くなりクレームが出たりする。このあたりの加減が難しい。P先生は確かに誠実な方だとは思うが、この点で患者対応能力については疑問が残る。」と採用には消極的な回答であった。この旨をP先生に伝えると、かなり落ち込んでいた様子であったが、自分の夢を叶えたいという熱意は変らず、私も提案方法を考え直した。
 P先生は、既に所属医局の教授に辞意を表明し、8月末で現在勤務している病院を退職することが決まっていた。求人先のクリニックのオープンは11月1日の予定であった。私の方からP先生に「まだ時間もありますし、求人先の本院の方で非常勤勤務をして、先生の評価をしてもらったらいかがでしょうか?」と提案した。先生の方も、「一般外来で1日、50~70人くらいの患者を診ていたことも3年くらいあるから、それもいい考えだな。」

と快く私の提案を受け入れてくれた。早速、この旨を事務長に申し出て次の週から週2日、午前診だけのお試し勤務が始まった。1ヵ月後、事務長から、P先生を新しいクリニックの院長に迎えたい意向の連絡が入った。早速、P先生に電話連絡を入れ、理事長、事務長との入職の打ち合わせをすることになった。当日、理事長に今回の採用理由をお尋ねすると、「一番の心配であった患者対応については、実際の勤務状況を見ていると全く問題はなく、どうしても自分の夢を叶えたいという熱意が伝わってきた。この先生なら新クリニックをまかしても良いと思った。」と、ありがたいお言葉を頂戴した。

 現在、P先生の年俸は1500万円から1800万円にアップし、近畿地区でも有名な開業医激戦地区で、地元医師会への挨拶まわり、DMなどの生活習慣病に対する予防医学外来の準備や、ご専門の消化器外科のスキルを生かせるクリニックでのヘモのオぺの構想など、多忙な日々ではあるが、ご自身の夢であったクリニック院長として充実した日々を送られている。
今回、あらためて「先生の夢を叶える」ことができたことの充実感と、医師紹介コンサルティングという仕事のすばらしさを再認識した次第である。今後もP先生のご健勝を心よりお祈りするばかりである。

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