恩返し
2006年03月15日 コンサルタントM
N先生は63歳。国立大学を卒業後、長きにわたり関連病院で消化器内科医として勤務していた。定年まではその大学の助教授として後進の指導に全力を傾け、その後は外来・検診を中心に働いていたが、3月末までで退職することになった。
先生との面談には必ず奥様が同席、常に3人での打合せとなった。奥様は先生のからだを気遣い、無理のない病院を希望した。ところが、N先生は「今の私があるのは、大学、病院、患者、社会全体のおかげである。今こそ過去の経験を生かし一人の医者として社会に恩返しをしたい」との熱い想いから、急性期の総合病院で勤務することを希望していた。N先生の前向きな姿勢に非常に深い感銘を受けた。
早速いくつかの病院へアプローチをかけたが、結果は思う様にいかなかった。N先生の年齢と周りの医師とのバランスがネックになったのである。N先生の要望に役職は入っていなかったが、働きやすい環境を整えるには、ある程度のポジションが必要だと私は考えたからである。
そして2週間後、なんとかA病院との面接にこぎつける事が出来た。
A病院は病床数150床の急性期病院である。A病院はN先生のポジションに関しては、面接後検討したいとの事であった。面接となれば、N先生の人柄、リーダーとしての資質は先方に必ず理解してもらえると私は考え、ポジションに関しても相応のものが得られると確信していた。
院長先生とN先生の面接は二時間に及んだ。N先生は医者としてなすべきこと、後進に伝えておきたい事を熱く語った。それを受け院長先生が出した結論は、当病院に副院長として是非就任して欲しいというものであった。N先生も即決した。面接後、2人が硬い握手をしたのを見た時、「人が人に惚れる」とか「縁」とかいうものはこういう事かとつくづく感じた。
収入面では、以前に健診をしていた時より300万円アップ、年俸1,800万円となったがそれ以上に大切な何かをN先生はこの面接から見い出していた。「僕の人生はこれからだ」と言われたN先生の横顔が忘れられない。
完
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