Dr.中川泰一の医者が知らない医療の話(毎月10日掲載)
中川 泰一 院長

中川 泰一 院長

1988年
関西医科大学卒業
1995年
関西医科大学大学院博士課程修了
1995年
関西医科大学附属病院勤務
2006年
ときわ病院院長就任
2016年
現職
2020年4月号
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コロナウイルス肺炎 III

 新型コロナがますます酷いことになっている。医療関係の皆さんも色々影響を受けられていると思いますが如何ですか?開業医の先生方は「コロナ感染の患者さんが来てしまったらどうしよう?」「受診抑制で売上が半分になった。」。勤務医の方々は一般業務が減るわけでもないのに、感染リスク冒してのコロナ対応などなど。医者にはあまり良い事はないですよね。知り合いの開業医の先生なんかはたいそうなN95マスクにゴーグルして宇宙人みたいな格好で診察している。街中のクリニックで患者さんは引いてしまうだろうと思うのだが、患者さんの方もお馴染みさんで、「うちの先生はいつも大袈裟やから。」と動じない。大阪の下町の話ですからね。

 ところが世界的な流行になって来て、以前お話ししたマスクなどの海外サプライ網も事情が変わって来てややこしい。「医者の知らない話」から「知らない方がいい話」になってしまっているので、深入りはやめときますね。

 ところで、こんなご時世で、先生方も色々質問されたりする事が多いと思います。明らかなデマの真偽なんか多くないですか?それと、効果のあるかもしれない薬剤が報道されると直ぐに、「手に入りませんか?」と来る。
 多少の医学的知識があれば明らかな事でも、一般の方はそうは行かない。マスコミが中途半端に取り上げて、信じ込んでしまっているからちゃんと説明しないといけない。結構めんどうくさいですよね。

 まあ、その中でも「コロナ予防」の件はちゃんと説明してあげるしかない。手洗い、うがい、人混みに行かないなどは一般的な注意として当然ですが、結局は自己の免疫を高めて罹りにくくするしかないわけだから。
 で、この日常生活で「免疫を高める」ってどうすればいいのでしょう?
 このコラムを読んで頂いている皆さんは「マクロファージと腸内細菌でしょ。」とおわかりかと思う。しかし日常生活ではどうすれば良いのでしょう?

 マクロファージを活性化するにはまず、ストレスを避け、楽観的である事だ。つまり必要な予防さえしていればやたらと「コロナにかかったらどうしよう。」などと気にし過ぎないこと。家にこもって(診察には出て来てもらいたいですがね。)コロナの話題だらけのワイドショーではなくて、面白いテレビ番組でも見ていると良いですよ。次に有酸素運動、人混みがないところでの散歩程度でも充分。それにたまには外に出て日光に当たらないとビタミンDの合成が低下する。ビタミンDはマクロファージを活性化する。

 そして、食事としては、リポポリサッカライド(LPS)やビタミンDはマクロファージを活性化するのでできるだけ摂取するよう心掛ける。食品としては、リポポリサッカライドは玄米、海藻類、きのこ類、根菜類などに多く含まれて、ビタミンD はメカジキ、きのこ類、ヨーグルト、牛乳、サーモン、牛のレバーなどに多く含まれている。

 そして、食事ではもう一つ大事な事があって、過食しない事だ。肥満などの話でも食事法は出たと思うが、実はマクロファージには免疫機能以外にも重要な役割がある。過剰な血液中の糖、脂質、たんぱく質などの栄養成分の処理だ。
 胃腸から吸収された栄養成分は血液、リンパ管により細胞に運ばれるが、余分な栄養成分は血液中に残る。そして、これを処理するのがマクロファージだ。しかしマクロファージがこれらの過剰な栄養素処理に手を取られると肝心な細菌、ウィルス、ガン等に対する免疫機能は低下してしまうのだ。野生の動物は病気すると餌が取れないから、空腹のまま安静にして治すらしい。空腹の時に免疫能が高まるのは、このような生体の防御反応の一環かも知れないですね。

(5月号に続く)

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