アッピール
今、統一地方選挙戦の真っ只中だが、各候補者のアッピールを見聞きしていると、自分の意思を素直に有権者にぶつける、ということがいかに難しいか分かる。
石原都知事にしても、「太陽の季節」という青春小説を書いたくらいだから、随分とその表現力に長けていると思ったが、ディベートや短時間での的を射たプレゼンテーションなどはあまりうまくない。「都知事は週に3日しか登庁しない」「豊洲への築地市場の移転が決まっているが、あそこは毒だらけだ」などといった、メジャーのテレビ番組で繰り返し流される「先制攻撃」にも弱いことが分かった。編集出来る媒体にばかりいた石原さんは、生現場に弱いのだろう。毎日が「生ライブ」のような日常診療を経験している我々は、もっとテレビに強いかもしれない。
ともかく、多くの人に自らの主張をアッピールする、というのは、なかなか難しいことなのだ。
昔、といっても8年ほど前になるが、日本医師会が「未来医師会ビジョン委員会」という、日本中の若手医師会員の中から将来有望な人材を集めた委員会を立ち上げた。ここに次々世代くらい後には、日本医師会のリーダーとなるべき医師たちが集まったのだ。今、日本医師会の常任理事には、この委員会の第二回委員長が入っているし、石川県の県医師会長には若干55歳の、やはり第三回委員会の委員長がなっている。今後は、続々とこうした人材が表舞台に登場すると思う。
さて、その第一回委員会の席上で、私は以下の若手医師宣言を提唱した。その時には、まだ時期尚早との意見が多く、採択されることはなかったが、委員会を三回行って、最終的に得られたものは、この若手医師宣言に近いものだった。
【若手医師宣言】
1) |
我々若手医師は、過去の呪縛から完全に自由であり、さらに自由な発想と、openmindedで前向きな心で将来の日本医師会のビジョンを作りあげることを誓います。 |
2) |
我々がよってきたる地域住民と、我々の患者さんを中心とした医療を構築するため、医療の専門職としていかなる努力もいとわない事を誓います。 |
3) |
より良い医療と、より良い医師像とは完全にイコールであることを認め、自立した医師像を社会に示し、medical professionとしての自らの地位を確立するためにさらに努力する事を誓います。 |
このアッピールは、今なお宣言するに足るものと考えている。日本全国の若手医師たちに、是非使ってもらえたら嬉しく思う。
最近は、さすがに若手ではなくなったから、このような素直で純粋なアッピールは出来なくなりつつある。その代わりに、少し変化球を投げることを覚えた。
その一つは、この「ドクター神津が行く!」のエッセー集を出版することだ。インターネットを使えない層の人々にもアッピールすることが出来るようにである。そして、さらにミラクル変化球として、歌を出すことにした。ラップミュージックは日本でも若者に人気があるから、ラップ調で作ってみた。
【国民は知らない】
作詞 神津 仁
作曲 松村光芳
外国の、権威ある医学雑誌に、ちゃんと書いてある
地域のコミュニティーの人、1000人が、どんな医療を受けているか
1000人のうち、9人しか病院に行ってない
1000人のうち、大学病院には1人、しか行ってない
ほとんどの人を、地域のKAIGYO-Eが診ている
だけど国民は全然知らない
日本の国民皆保険、負担低い
かわりにとんでもない低い
医療と福祉しか受けられない
おかしいと思わないかい日本の実態、番組制作
医師芸人ばっかりが、芸人とつるんで変な番組作って放送
テレビのディレクター、みんな若者で
社会の実態知らないで
勉強しないで
軽薄短小でいい、面白けりゃいい、で
本当のこと何にもいわないで
面白けりゃ、何でもいいんかい
一体全体どうなっているんだい ( 日本のマスコミ! )
昨日と今日とで正反対のこと言い
恥ずかしくないのかい
マスコミの司会
そんな中で、KAIGYO-Eが頑張っているぜ
だけど国民は全然知らない
一体全体どうなっているんだい
おかしいとは思わないかい、日本の実態、日本の国会
KAIGYO-E 頼りにしてるぜ
KAIGYO-E まともに生きよぜ
KAIGYO-E 日本の誇り ( KAIGYO-E ! )
これが巷で流れれば、我々のアッピールは国民に届くことは間違いない。そのうち、プロモーションDVDを作って、テレビやラジオで流してもらう。オリコンチャートで上位に行けば、その印税で「低所得者には無料で診察する赤ひげドクター神津」に変身してみせよう。