ドクタープロフィール
ドクター神津
神津院長は昭和52年に日本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局され、その後、神経学教室が新設されると同時に同教室へ移られました。医局長、病棟医長、教育医長を長年勤められ、昭和63年、アメリカのハーネマン大学およびルイジアナ州立大学へ留学。帰国後、特定医療法人佐々木病院(内科部長)を経て、平成5年に神津内科クリニックを開業された。神津院長の活動は多岐にわたり、その動向は常に注目されている。
2006年7月号  ジェネリック薬品(後発品)について
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ジェネリック薬品(後発品)について

  ジェネリックを辞書で引いてみると「一般的な、登録商標されていない、ノーブランドの」という意味と分かる。医薬品業界では、ゾロ品とか二流品といっていたものだ。それが急にジェネリックと、なにやら品の良さそうなカタカナになって出てきたのは、世界の先進国が医療費の高騰に困って考えられた苦肉の一手だったのだ。
   日本は、まだ世界の先進国のように医療費が高騰しているわけではないのにもかかわらず、何を血迷って急にブレーキをかけるのか。むしろ、世界の先進国ではすでに認可され、使われている多くの新薬が、軒並み足止めを食っている状態で、そのために助かる命も救えず、改善する病状もそのままになっている。日本国民は、そのことをもっと知るべきだろう。  

  「同じ成分で同じ効果なら、安い方がいいですね」と、誠実そうな俳優さんが、いかにも本当の事のようにテレビコマーシャルで話しているのを見たことがあると思う。実は、この「同じ成分なら同じ効果」かどうか、ということについては大いに疑問があるのだ。
   後発品を許可するにあたって、厚生労働省が義務付けたデータには、毒性試験が含まれておらず、先発品と違った添加物が含まれていたり、先発品にはない不純物が含まれていて副作用が増える可能性があること、などについては考慮されていない。
   福井大学医学部の政田教授によれば、同じ原料から作られたとされているある後発品のデータを解析したところ、服用した薬が体内に吸収され、血液中に入って効果を現すべき濃度が、製品によってひどくばらついていたとのこと。あるものは先発品の約20%にしかならず、あるものは2倍の濃度になっていたとのことだから、「先発品からジェネリック薬品に変えたとたんに効果がなくなったり、急に副作用が出たりすることが予測される」と注意を促しているのもうなずける。

  また、先発品には許可されている適応症が、後発品には許可されていない場合もある。
   たとえば、抗血小板剤(血液をサラサラにする)のプレタールという薬は、
   A.慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛、冷感等の虚血性諸症状の改善
   B.脳梗塞発症後の再発抑制
   こ の二つの病気に適応があるのだが、後発品にはA.のみが許されていて、B.の病気に対して使用することは許されていない。同様に、セルベックスという胃粘膜修復剤の場合も、先発品はA.胃潰瘍、B.急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期いずれに対しても適応があるが、後発品はB.の胃炎に対しての処方は許されていない。

  こうしたことを、日本国民は知らされていない。さらにいえば、薬の値段は安くなっても、薬局での調剤料は変わらないし、むしろ特別指導料や後発品変更にともなう情報提供料が追加されて諸費用は高くなる。これらが相殺されて、結局窓口で支払うときには、二週間分の処方で差額は(患者3割負担の場合)70円~250円の違いにしかならないのだから、わざわざ鐘や太鼓でふれ回る必要があるのか疑わしい。
   もちろん、後発品の開発と安全管理がきちんとした体制で行われ、医療費の効率的な配分がなされることに異論を唱えるわけではない。しかし、今の日本の現状を見るかぎり、経済的な側面だけを取り上げて、国民の健康と医療をないがしろにしている、といわざるをえないのだ。

(福井大学医学部 附属病院薬剤部教授 政田幹夫先生による)

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