地域医療の質を高めるためには、診療連携が大切だ。かつては、病診連携と称して、病院が診療所と連携を「とってあげます」という気持ちが明白だった。何もしなくたって、3時間待たせて3分診療したって、患者はイヤッというほど来るに決まっている、と思っていた。
大学病院なら、何をやっても文句は言われない、と思っていた。開業医なんかレベルが低い、と思っていた。 実際、10年前までそうした気分が日本国中に満ちていた。しかし、世田谷区若手医師の会が活動を始めて、その雰囲気は変わってきた。我々の会員は、若くて、患者さんに親切で、丁寧に診療し、大学病院の外来の医師よりずっと臨床の力量が高い。入院の設備はないが、入院しないで出来ることは横の連携で殆どが可能なのだ。しかも、病院の勤務医でコミュニケーションを大切にする素晴らしい医師たちも世田谷区若手医師の会の会員となって、お互いの人格、医師としての専門性と経験を認め合いながら、患者さんによりよい医療を提供しようという仲間になった。この連携は、病院が主体でも、診療所が主体でもない、イコールパートナーとしての連携であるから「診療連携」と呼んだ。
フランスでも、大都会のパリ(世田谷区とほぼ同じ大きさ)でさえ、北の住民が南のジェネラリスト(家庭医)にかかることはほとんどないらしい。その土地で何代も信用を得て開業している医師を、自分のかかりつけ医として大切にしているのだ。フランスで20年外科医として働いている重光先生は、フランスの医学の特徴を次の言葉であらわしている。
「フランスでは,医師は自由職とされ,ほとんどが拘束の多い勤務医を避ける。また,あくまでフランス医学では,人間が人間を扱うという臨床医が医師の本来の職分として最重要視される傾向が伝統としてあり,現在の日本や19世紀後半のドイツの大学病院で行なわれていたように,臨床と基礎研究を同時にかけもちする医師は少ない」
(フランスの保健医療の現状:
http://www.igaku-shoin.co.jp/04nws/news/n2001dir/n2425dir/n2425_02.htm#00 )
「地域医療学」など教わった覚えはないが、我々はそれを教える年代になった。ここでそれを教えなければ、日本の医師はアメリカ並に、医学は一流だが医療は三流といわれるようになってしまいかねない。臨床医の価値を日本人が素直にく評価して受け入れるように、今後10年は努力を惜しまずに地域医療に取り組まなければならない。そうした文化を日本に根付かせなければならない。
「質の高い地域医療の雛型が、世田谷区若手医師の会により世田谷区で作られ、2001年日本発世界へと発進された」と、歴史に残るように高い理想を掲げよう。