妙典さいとう耳鼻咽喉科
齊藤 達矢 院長プロフィール
1978年に奈良市で生まれる。2003年に兵庫医科大学を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院で研修を行う。2005年に順天堂大学大学院に入学し、2009年に修了する。2009年に順天堂大学医学部附属静岡病院耳鼻咽喉科・頭頸科に助教として勤務する。2011年に順天堂大学医学部附属順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科に助教として勤務する。2012年に順天堂大学医学部附属練馬病院耳鼻咽喉・頭頸科に外来医長として勤務する。2014年に順天堂大学医学部耳鼻咽喉科講座に非常勤助教として勤務する。2014年10月に千葉県市川市に妙典さいとう耳鼻咽喉科を開業する。
日本耳鼻咽喉科学会専門医、補聴器適合判定医、補聴器相談医、騒音性難聴担当医、音声言語機能等判定医など。日本小児耳鼻咽喉科学会、耳鼻咽喉科臨床学会、日本鼻科学会にも所属する。市川市立行徳小学校、新井小学校、富美浜小学校の校医も務める。
千葉県市川市妙典は江戸川の西側に開けた地区で、2000年に土地区画整理事業が終了したことを受けて、東京メトロ東西線の妙典駅が開業した。近年はイオン市川妙典店やイオンシネマ市川妙典がオープンしたほか、マンションも続々と建設されている。一方で、江戸川河口付近はハゼ釣りの名所として知られ、江戸川橋梁付近には釣り船が係留されるなど、長閑な一面もある。
妙典さいとう耳鼻咽喉科は妙典駅の高架下に2014年に開業したクリニックである。妙典さいとう耳鼻咽喉科では最新の設備や機器を駆使して、「自分では見えない部分の病気は不安」という患者さんの声に応えている。この近隣では珍しい小児耳鼻咽喉科も標榜し、子どもの疾患の治療にも力を入れている。駅に隣接していることから勤務帰りのサラリーマンも多いため、睡眠時無呼吸症候群の治療にも積極的に取り組んでいる。
今月は妙典さいとう耳鼻咽喉科の齊藤達矢院長にお話を伺った。
開業に至るまで
◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
小学生の頃、骨折などの怪我が多く、整形外科にかかることがあったのですが、そのときから漠然と「人を助ける仕事はいいな」と考えるようになりました。それから迷うことなく、医師を目指してきました。
◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
バスケットボール部に入っていました。中学生のときにバスケットボールをしていたのですが、高校では中断していて、大学で再開したんです。西医体などで勝ち進んだわけではありませんが、キャプテンも務めました。団体競技ですし、協調性が身につきましたね。
◆ 大学時代はどんな趣味をお持ちでしたか。
部活動のほかは勉強に追われていましたし、特に趣味はなかったです。私の母校は5年生まではそこまで厳しくなく進級できるのですが、卒業試験が大変なんです。それまでは試験のたびに丸暗記で何とかしていましたが、卒業試験は範囲が広く、丸暗記では対応できないと悟りましたね(笑)。そこから頑張り、成績も上げて卒業することができました。
◆ 専攻を耳鼻咽喉科に決められたのはいつですか。
大学4年生のときです。周りの先輩に耳鼻咽喉科に進まれた方々がいらしたので、私も興味が湧きました。整形外科と迷いましたが、最終的に耳鼻咽喉科に決めたのは内科的な処置と外科的な処置の両方ができると考えたからです。今は整形外科も内科的だし、外科的でもあると分かっていますが、当時は耳鼻咽喉科の持つ二面性に憧れました。
◆ 研修先を順天堂大学医学部附属順天堂医院に決めたのはどうしてですか。
実家が既に東京に移っていたこともあり、東京の病院をいくつか見学に行きました。当時は今のようなスーパーローテート制度はなく、すぐに入局しなくてはいけませんでした。見学に伺ったところ、順天堂大学は私と考え方が似た先生方が多そうだったのが決め手になりました。
◆ 順天堂大学での研修はいかがでしたか。
今のような制度ではなかったとは言え、麻酔科と放射線科を3カ月ずつ回ることができました。麻酔科は附属浦安病院で研修できたのも良かったです。耳鼻咽喉科の研修は本院と附属静岡病院で行いました。静岡病院は三次救急の指定病院なので、外傷の患者さんが次々にいらっしゃいます。度胸がつきましたね(笑)。一般的な症例も豊富でしたので、経験値を積めたと思っています。
◆ 大学院でも学ばれたのですね。
私自身がアレルギー性鼻炎ということもあり、アレルギーの研究のために大学院に進学しました。最初の2年間は臨床をしながらでしたので、そこまで研究漬けではなかったのですが、後半の2年間は完全に臨床を離れて、実験や研究に打ち込みました。研究をする中で、臨床だけをしていた頃に比べると、違った見方ができるようになっていきましたね。ただ、私は臨床の方が好きなのだと再認識しました。患者さんと直接、会って、お話ができる仕事はやはりいいものですね。
◆ 静岡や練馬の附属病院でも勤務されていますね。
本院は大きな組織ですから、耳、鼻、喉、がんといった担当に分かれています。また、都心の病院でもありますから、ほかの病院との機能も分化しており、外傷などを診る機会はほとんどありません。しかし、練馬の附属病院の耳鼻咽喉科は医師2人のみの体制ですので、何でも診ないといけませんでした。もちろん、難症例は本院に紹介していましたが、苦労しましたね。静岡は三次救急ならではの忙しさがありました。オンコールも月に8回はありましたが、その分、力がつきました。
◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
勤務医時代に教わったことと経験があるからこそ、開業できたと感じています。今、一人前であるとは言い難いですが、開業医としての実力をつけられたのは勤務医時代の上司や先輩方のお蔭ですね。既に医局を離れたメンバーも多いのですが、今も当時の上司や先輩方、仲間とは食事に行くなど、プライベートでも親しくしています。
開業の契機・理由
◆ 開業の動機をお聞かせください。
小学生の頃から町医者という存在に憧れていましたから、私にとっては医師になることと開業医になることは別ではなかったんです。勤務医時代も大学に残るよりも、地域医療を頑張っていきたいと考えていましたので、タイミングのいいところで開業しようと決めていました。
◆ 開業地はどのように探されたのですか。
最初は色々な場所を自分の足で歩いて、探していました。そのうちに東西線沿線に絞って探すようになったのはこの近くのクリニックにアルバイトに来たことがきっかけです。東西線沿線は患者さんが多そうなことが分かりましたし、妙典駅の近くには耳鼻咽喉科のクリニックがなかったこともあり、こちらを選びました。
◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
実際に街を歩き、街の雰囲気の良さと人の往来の多さを実感しましたので、好感触を得ました。小さい子どもさんやその親御さんといったファミリー層で賑わっている街だと思いましたね。妙典駅付近のみならず、隣の行徳駅や原木中山駅の辺りも歩きましたが、いい印象でした。
◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
診療圏調査をしましたが、結果はそこまで芳しくはなかったです。ただ、自分で街歩きをしていましたので、大丈夫だと気持ちを大きく構えていました。
◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
全ての準備に苦労しました(笑)。特に最後の1カ月は業者さんも色々な予定を積み込んできますし、電子カルテの整備をしながら、待合室の椅子や本棚などを発注したりなど、あらゆる準備をこなしていきました。
◆ 医師会には入りましたか。
市川市医師会に入りました。今は市川市内の3つの小学校の校医もしています。
◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
非常勤の事務スタッフが3人と妻です。妻は医師なのですが、開業当初は看護師業務を手伝ってくれていました。事務スタッフの募集にあたってはかなりの応募がありましたが、最初に内定とお伝えした人から断られてしまい、そこからは少し大変でしたね(笑)。
◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
炭酸ガスレーザーや無呼吸簡易検査機器、重心動揺計、聴力検査機器などを揃えましたが、こだわったのはファイリングシステムとモニターです。私は画像を重視しています。患者さん自身が見ることのできない疾患を撮影し、それをファイルして、モニターでお見せすることで、患者さんがご自身の病状をより良く理解することに繋がります。結果として、治りも早くなりますね。勤務医ですと、自分の意志でこうしたシステムを導入することは難しいですし、要望も通りにくいです。開業の大きなメリットは自分のしたい医療ができることではないでしょうか。
◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
私はシックで、かっこいい雰囲気が好みだったのですが、妻が「ファミリーの患者さんが入りやすく、受け入れられやすくなるように、明るい雰囲気にしましょう」と言うので、白やベージュを基調にしています。妻の提案は当たりでしたね(笑)。キッズスペースを広めにとっているのも特徴です。
診察室は最初は一つしかありませんでした。開業後1年が経ったときに2診制に変えたんです。開業当初から2診制になることを見込んで配管だけはしておいたのですが、二つ目の診察室を新設するのは想像以上に大変でしたね。設計の予定を変更したりもしたので、完成まで2週間ほどかかりました。
クリニックについて
◆ 診療内容をお聞かせください。
標榜しているのは耳鼻咽喉科と小児耳鼻咽喉科です。開業にあたっては、小児の多い地区ということもあり、あえて小児耳鼻咽喉科を標榜していました。以前から小児が得意だったわけではないのですが、非常勤で勤務したクリニックで小児を診る機会が多く、楽しかったんですね。
耳鼻咽喉科としては風邪、鼻炎、難聴、めまいなどが多いです。花粉症ではご希望があればレーザー治療を行っています。
また、睡眠時無呼吸症候群も積極的に診ています。睡眠時無呼吸症候群は社会問題化していますが、一般的な認知度はまだ低いので、私どもで診療していると伝えることで疾患そのものの認知を広めたいと考えています。いびきを治したいと言って来院された患者さんが睡眠時無呼吸症候群であることも少なくないですね。勤務医時代からCPAPを使った治療をしています。これは睡眠時に気道に空気を送り込むマスクを装着していただく治療法です。大学病院では2、3時間待ちのこともありますが、私どもでは優先的に予約をお受けしていますから、大きな病院から転院されてくる患者さんもいらっしゃいますね。いびき自体の改善は難しいですが、睡眠時無呼吸症候群の治療にいらしていただければと思っています。
◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
4つあります。一つ目は「『名医たらずとも良医であれ』を信条に、患者様の目線に立った医療の実践」、二つ目は「『人の和』を大切にする心を持ち、チーム一丸となって最善の医療を提供する」、三つ目は「志を高く持って常にひたむきに努力し、日々の研鑽を積む」、四つ目は「皆様の心のよりどころとなるような、地域の『ほっとステーション』を目指す」です。
◆ 患者さんの層はいかがですか。
子どもの患者さんが6割から7割を占めています。残りはその親御さんの世代の方々ですね。高齢の患者さんは少ないです。ただ、受付を19時までにしていますので、18時から19時までの時間帯は都心に通勤する方々が中心になります。
◆ 健診はどのような内容で行っていらっしゃいますか。
健診は特に行っていません。
◆ 病診連携については、いかがですか。
大半が順天堂大学医学部附属浦安病院にご紹介しています。そのほかは順天堂大学医学部附属順天堂医院と東京歯科大学市川総合病院ですね。睡眠時無呼吸症候群に関しては私どもでは簡易検査しかできないので、そこで微妙な値が出た患者さんは順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターで詳しい検査をお願いしています。
◆ 経営理念をお教えください。
経営的には老若男女といった全ての方々を対象にした方がいいのかもしれませんが、私は小児に特化しようと考えています。そのための内装であり、診療スタイルなんですね。ただし、高齢の患者さんがご不快に思われることがないような配慮を心がけています。
◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
開業した頃は挨拶の徹底をよく伝えていましたが、今は私が何も言わなくても、きちんと挨拶できているので安心しています。私どもでは朝礼、終礼のほか、昼礼も行っています。昼礼は「ひるれい」と呼んでいます(笑)。私は終礼にしか出席しません。朝礼は終礼で話したことの反復、昼礼は午前中にあったことをスタッフ同士で把握するためのものですね。それぞれ5分から10分程度で終わります。また、金曜日は30分かけてミーティングを開催しています。キッズクラブを作ることを計画しているので、今はその準備や運営についての話し合いが中心です。朝礼、昼礼、終礼で話し合ったことの再確認の場でもあります。
◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
ホームページのほかは東西線沿線の駅に看板を出しています。今は妙典駅、原木中山駅、西船橋駅の3カ所に1枚ずつです。また、患者さんにポケットティッシュを差し上げるのですが、その中にクリニックからのお知らせを入れています。お知らせは通年、使えるものとレーザー治療などの季節に合わせたものを用意しています。ほかの印刷物としては院内案内があります。これは受付だけでなく、ネブライザーの近くやクリニックの外に置いたりしています。
◆ 子どもの患者さん向けにはいかがですか。
キッズスペースもありますが、子どもの患者さんには「ご褒美」のおもちゃが喜ばれています。患者さん本人のみならず、付き添いで来た子どもにも差し上げていますよ。鼓膜切開などの痛い処置を頑張った子どもさんには「ガチャガチャ」をプレゼントしています(笑)。
小児耳鼻咽喉科を標榜しているのですから、保護者の方のお悩みに応えていかなくてはいけません。私どもでは子どもさんに多く見られる耳鼻咽喉科の疾患や感染症の知識、保護者の方からいただく質問への回答をまとめた小冊子を作り、無料で差し上げています。
開業に向けてのアドバイス
大半の人が大学病院を退職して、いきなり開業するのだと思いますが、最終的に開業を望んでおられるのなら、診療所勤務医になられることをお勧めします。私は先輩のクリニックに非常勤で勤めたのですが、そこで教えていただいた診療スタイルが今も役に立っています。開業医がどういうことをしているのか、開業医のもとで場数を踏みながら勉強させていただく機会は貴重です。例えば、私は大学病院では患者さんの耳を裸眼で見ていました。それでも見えているのだと信じていたのですが、そのクリニックでは顕微鏡を使っていたんですね。顕微鏡で見たところ、見え方が格段に違うんです。それで開業後はずっと顕微鏡を使っています。
今は少しずつ診療所勤務医も増えてきましたが、開業前の1、2年で結構ですので、診療所勤務医になり、診療はもちろん、増患対策などの経営面も学んでから開業されるといいと思います。
プライベートの過ごし方(開業後)
身体を動かすことが好きなので、休みの日はスポーツジムに通っています。また、旅行も趣味です。以前はハワイやモルディブによく行っていたのですが、最近は海外にはなかなか行けなくなりました。
タイムスケジュール
クリニック平面図
妙典さいとう耳鼻咽喉科 | ||
院長 | 齊藤 達矢 | |
住所 | 〒272-0111 千葉県市川市妙典4-2-12 |
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医療設備 | 炭酸ガスレーザー、ファイバースコープ、耳用デジタルカメラ、無呼吸簡易検査機器、ティンパノグラム、フレンツェル眼鏡、オージオメータ、ネブライザー、コアギュレーター、耳用顕微鏡、重心動揺計、電子カルテなど。 | |
スタッフ | 19人(院長、非常勤医師5人、常勤看護師2人、非常勤看護師1人、常勤事務3人、非常勤事務7人) | |
物件形態 | ビル診 | |
延べ面積 | 35坪 | |
敷地面積 | 35坪 | |
開業資金 | 6,000万円 | |
外来患者/日の変遷 | 開業当初50人→3カ月後100人→6カ月後150人→現在150人 | |
URL | http://saito-jibika.com/index.html |
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