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おしあげ耳鼻咽喉科

山田 哲也 院長

山田 哲也 院長プロフィール

1980年に福岡県久留米市で生まれ、兵庫県姫路市で育つ。2004年に昭和大学を卒業後、東京医科大学病院で初期研修を行う。2006年に東京医科大学耳鼻咽喉科学教室に入局し、東京医科大学病院で後期研修を行う。2011年に医療法人社団翔和仁誠会メディカルグループのあおぞら耳鼻咽喉科、国領駅前耳鼻科、たかまつ耳鼻咽喉科クリニックに勤務する。また、昭和大学病院に非常勤医師として勤務する。2014年に東京都墨田区におしあげ耳鼻咽喉科を開設する。
日本耳鼻咽喉科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会に所属する。

 東京都墨田区横川の地名の由来は町の西側を通る大横川である。横川地区は墨田区本所地域の行政施設が集約されており、墨田区役所の横川出張所や本所消防署、本所警察署が点在する。また、大横川の多くを埋め立てて作られた大横川親水公園は総延長が約1800メートルに及ぶという大規模な親水公園となっている。
 おしあげ耳鼻咽喉科は押上駅から四ツ目通りを徒歩5分、本所警察署の向かい側に位置する。押上駅は京成電鉄押上線、東京都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線、東武鉄道スカイツリーラインが乗り入れ、1日平均66万人もの乗降人数を誇る。おしあげ耳鼻咽喉科は恵まれたアクセスを活かし、医療法人社団翔和仁誠会メディカルグループの中のクリニックとして、2014年11月に開業した。
 今月はおしあげ耳鼻咽喉科の山田哲也院長にお話を伺った。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 曽祖父の代から医師の家系なんです。曽祖父の専門ははっきりしませんが耳鼻科っぽいことをやっていたと伝え聞いてます。祖父や父は耳鼻咽喉科医です。兵庫県姫路市で開業しており、私も中学入学の頃までは自然に父の後を追っていました。もともと機械が好きでしたので、大学進学については工学部と迷うようになったのですが、趣味で機械をいじるのであれば後からでもできると思い、医学部でしか体験できないことを求めて、医学部に進学することにしました。人の役に立ちたいという思いも強かったですね。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 部活動のフィギュアスケートに熱中していました。6年間、週に6日から6.5日は滑っていましたね。スケートは小さい頃に年に一度ぐらい滑りに行く程度の経験しかなく、始めたきっかけは部の先輩たちからの勧誘です。ここでやらないと一生やらないだろうなと思って入部しましたが、のめり込みましたね。3回転ジャンプも少し跳び、インカレの2部で表彰台を争っていました。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 高校生のときは将棋部に入っていたので、大学でも趣味として続けていました。アマチュア四段です。最近は戸辺誠先生と仲良しで、時々一緒に飲みに行きます。


◆ 専攻を耳鼻咽喉科に決められたのはいつですか。
 医学部に入ったときには耳鼻咽喉科だけは嫌だと思っていたんです。父の外来を見ていて、鼻掃除や耳掃除だけでは遣り甲斐を感じないだろうと誤解していました。しかし、5年生のときのポリクリで耳鼻咽喉科に行ったときに、ほかの科よりも馴染むものがあったんですね。落ち着きましたし、自分が一生いるところだと直感しました。子どもが好きなので、小児科とも迷いましたが、耳鼻咽喉科では子どもを診る機会が多いので、子どもの耳鼻咽喉科疾患をしっかり診ていこうと考えました。


◆ 初期研修の病院を東京医科大学病院に決めたのはどうしてですか。
 出身は昭和大学ですが、昭和大学はもともと東京医科大学と東邦大学との交流が盛んなんです。それで東京医科大学病院に見学に行ったのですが、雰囲気の良さで決めました。


◆ 東京医科大学病院の耳鼻咽喉科教室に入局されたのはなぜですか。
 一般的な大学病院はメインとなる専門外来が1つ、2つしかないのですが、東京医科大学病院耳鼻咽喉科はユニークで、多くの専門外来が揃っているんです。私はそのうち開業したいと考えていたので、色々な専門分野に秀でた先生方が揃っているところで満遍なく研鑽を積んだ方が将来、プラスになると思いました。


◆ 後期研修はいかがでしたか。
 東京医科大学病院のほかに、東京医科大学八王子医療センター、東京医科大学茨城医療センターにも行きました。八王子や茨城は医師が少ないので、自分でしなくてはいけないことが多く、色々なことが身につきました。忙しかったですが、遣り甲斐もありましたね。手術の症例も豊富でした。扁桃腺切除手術が得意になり、あまりに早く終わるので、病棟のスタッフから逆に心配されたこともありました(笑)。


◆ 翔和仁誠会メディカルグループに入職されたきっかけはどういうことだったのですか。
 体調を崩して退職した後、フリーランスという形で働いていたときに巡り合った職場なんです。患者さんからの信頼が厚く、経営的にもうまくいっていて、全てにおいて非がないグループだと思いました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 日勤して当直して、また日勤という日々はきつかったですね。結果として、体調を崩してしまいましたが、勤務医時代に教わったことや身につけたことはとても大きかったですし、多くの先生方にお世話になったと感謝しています。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 九州で開業しようかと考えたこともあるのですが、翔和仁誠会メディカルグループの髙松俊輔理事長から開業のお誘いをいただいたんです。勤務医が体力的に厳しかったこともあり、生活のリズムが作りやすい開業医になることは体調管理の面からもいいだろうと思いました。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 法人本部がリサーチして、決定したんです。耳鼻咽喉科の競合がなくもないのですが、先生方がご高齢で閉院されるところが多くなっていたり、東京スカイツリーの開業で人の流れが増えてきたことが選定理由だったのでしょう。錦糸町の再開発で、若年人口が伸びてきていることも大きかったようです。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 フリーランスの勤務医時代、総武線沿線は外国の患者さんも多いという印象があり、語学の勉強も必要だな!と思っていたのですが、当院では外国の患者さんにあまり会わないなぁというのが第一印象です。
押上駅から徒歩5分の場所ではありますが、患者さんはほとんど自転車で来られますので、駅からの距離は問題になりませんでした。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 法人本部で行いました。法人の中で12番目のクリニックですから、マーケティングには慣れているようですね。出た数字もいいものでしたし、開業後の患者数の伸びも法人内で最速でした。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 スタッフ集めや資金繰りは法人本部で行いますので苦労はなかったです。有り難いことに優しいスタッフが揃いました。私としては「患者さんがいらっしゃらず、こんなにいいスタッフたちが職にあぶれるようなことになったらどうしよう」という不安の方が大きかったです。私はともかく、スタッフが困る事態になることだけは避けたかったですね。


◆ 医師会には入りましたか。
 入っていません。これからも入る予定はないです。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師が1人と受付と診療介助を行うスタッフが4人いました。また、私は週に1日、髙松理事長がなさっているたかまつ耳鼻咽喉科クリニックで開業医としてのトレーニングを行っていたので、私がたかまつ耳鼻咽喉科クリニックに勤務する日はこちらには非常勤医師が来てくれていました。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レーザー、ファイバースコープ、電子カルテ、フレンツェル眼鏡、オージオメータ、ネブライザー、電気メス、顕微鏡を揃えました。その後、舌下免疫療法を始めたので、アナフィラキシーショックへの対応のために酸素ボンベとAEDを購入しました。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 患者さんが増えたときを想定し、待ち時間の緩和のため、第二診察室を作ったのがこだわりでしょうか。患者さんの動線を考慮した設計にしています。フロアの真ん中に柱があるのが若干の窮屈さを感じさせますが、建物の構造上、やむを得ないですね。待合室は広めに設計したはずですが、最近ではお立ちになって待っていらっしゃる方もいるので、対応を検討中です。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 標榜している診療科は耳鼻咽喉科とアレルギー科です。主な疾患は、子どもでしたら中耳炎、副鼻腔炎、大人はアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、難聴、目眩ですね。想定外だったのが咳についてのご相談の多さです。喘息の方も少なくないですし、薬を早めに出すようにしています。
 特徴としてはスギやダニの舌下免疫療法が挙げられます。スギなら液体、ダニなら錠剤の薬をご自宅で使っていただけますし、保険適用ですので好評をいただいています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さんの満足度を向上させたいと思っています。例えば、子どもの鼻処置を入り口で済ませるのではなく、カテーテルで奥まで行っています。瞬間的な痛みはありますが、あとからのすっきり感が違うので喜ばれていますね。子どもさんが目をつぶってしまうと痛みを感じるので、繰り返し教えて慣れていってもらっています。そのうち、親御さんが抑えこまなくても大丈夫になるんですよ。私は子どもが大好きですし、子どもさんの成長を感じられるときは嬉しいですね。また、局所麻酔で鼓膜切開やチュービングも行っています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 7割は子どもさんで、3割が子どもさんの親御さん世代です。高齢者は少ないですね。近隣に小児科のクリニックが少ないためか、胃腸炎や気管支炎といった小児科のご相談もありますので、家庭医としてのスタンスを持った初期対応を心がけています。子どもさんの成長とともに、私どもも成長していきたいです。


◆ 健診はどのような内容で行っていらっしゃいますか。
 健診は行っていません。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 耳鼻咽喉科ですと東京都立墨東病院、同愛記念病院がほとんどです。小児科は賛育会病院ですね。大学病院の場合は東京医科歯科大学医学部附属病院や順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターにご紹介することが多いです。


◆ 経営理念をお教えください。
 専門外のことでも極力、診ようと思っています。経営の収益面に関しては法人本部に任せていますので、通常通りの仕事をしていれば問題ないと思います。ただ、鼓膜切開やチュービング、鼻のレーザーといった処置は収益が上がっていますし、ほかのクリニックで行っていない治療を行えば、そのまま経営にプラスになるようです。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 週に1日、朝礼を行っています。内容はクレームの情報共有をしたうえで、その対応を話し合うことが多いです。クレームについては決まった日以外でも不定期に集まって、話し合ったりもします。私を含めて、スタッフが気を抜いた一瞬があっても、患者さんからしたら大事な時間なわけですから、患者さんに気持ち良く帰っていただくようにしようと伝えています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページのほかは看板を1枚、出しています。看板は押上駅に入っていくところのビルの側面です。車に乗っている人にもよく見えるような位置なのがいいようです。オープン当初は新聞の折込チラシも行いましたが、最近はほとんどが口コミですね。


開業に向けてのアドバイス

 私は医学的に正しいことを貫きたいという性格で、大学病院ではそれが良かったのですが、開業医になると現実問題として難しいです。患者さんは病気を治すためだけに生活しているわけではないので、こちらが融通を利かせないといけません。子どもさんの診療にしても、大学病院は100点を目指す場所ですが、私どもでは子どもさんの聞こえが良くなるなど、その子どもさんの未来が少しでも改善されればいいと思っています。「3日後は都合が悪い」、「昼間は薬を飲めない」といったお話に耳を傾け、患者さんの生活スタイルに寄り添った形でアレンジしていく力が必要ですね。私も患者さんから教えられました。患者さんが次回に来てくださらないことには治療もできないので、臨機応変な対応を行うようにしています。

プライベートの過ごし方(開業後)

 東京ソラマチに冬季限定で東京スカイツリータウンアイススケートがオープンするので、週に2回ぐらい通っています。まだ2回転も飛べましたよ(笑)。
 また、高校生のときから趣味でやっているカメラが高じて、今はカメラマンの依頼が後を絶ちません。知り合いのミュージシャンの写真を撮ったのがきっかけで、タレントさんの宣材写真を撮ったり、印刷物のデザインをしたりしています。着物デザイナーで有名な紫藤尚世先生には撮影総監督としてご愛顧いただいてます。ほんと素敵な着物ばかりで、思わず1着買っちゃいましたよ(笑)

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

おしあげ耳鼻咽喉科
  院長 山田 哲也
  住所 〒130-0003
東京都墨田区横川3-11-14 マツマルビル2階
  医療設備 レーザー、ファイバースコープ、電子カルテ、フレンツェル眼鏡、オージオメータ、ネブライザー、電気メス、顕微鏡、酸素ボンベ、AEDなど。
  スタッフ 10人(院長、非常勤医師2人、常勤事務7人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 40.6坪
  敷地面積 40.6坪
  外来患者/日の変遷 開業当初40人→3カ月後120人→6カ月後150人→現在170人
  URL http://oshiage.sho-jin.com/

2016.01.01 掲載 (C)LinkStaff

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