新宿駅前クリニック
蓮池 林太郎 院長プロフィール
1981年に東京都板橋区で生まれる。2006年に帝京大学を卒業後、国立精神神経センター国府台病院(現 国立国際医療センター国府台病院)で初期研修を行う。2008年に国際医療福祉大学三田病院に勤務する。2009年に東京都新宿区に新宿駅前クリニックを開設する。
オバジ認定医など。日本皮膚科学会に所属する。
東京都新宿区西新宿は各線のターミナル駅である新宿駅の西側一帯の地域である。西新宿1丁目は新宿の繁華街の一角を担う場所であり、人波が絶えない。小田急百貨店、京王百貨店の各本店、ヨドバシカメラ本店のほかに、ビックカメラ、ソフマップ、ヤマダ電機新宿西口館などの大型家電販売店が林立し、国内でも有数の商業機能集積地となっている。
日本有数のターミナル駅である新宿は、クリニックが乱立しており、全国的にみても、最も競争の激しいエリアである。新宿駅前クリニックが開院してからも、多くのクリニックが開院し、その分、既存のクリニックは、10医院ほど、閉院しており、年々競争が激化しているとのこと。
新宿駅前クリニックは西新宿1丁目に開業していた佐藤皮膚科クリニックを2009年に継承したクリニックである。良質な医療、待ち時間の短縮、費用負担の軽減を診療方針に掲げ、皮膚科、内科、泌尿器科を中心に診療している。
今月は新宿駅前クリニックの蓮池林太郎院長にお話を伺った。
開業に至るまで
◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
両親が医師という家庭で育ちましたので、両親の背中を見ているうちにという感じですね。両親からは医師になるように勧められたことはありませんが、母が自宅の近くで眼科のクリニックを開業していたので、小さい頃は母のクリニックによく遊びに行っていたんです。母が患者さんに感謝され、喜ばれている姿を見て、「いい仕事だな。こういう仕事はほかにあまりないのではないか」と思うようになり、医師を志しました。
◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
卓球部に入り、部長を務めていました。卓球は小学校のときに少しやった程度でしたが、先輩方や友達に恵まれ、楽しい部活動でした。東医体にも出場していましたが、1、2回は勝って、3回目に負けるぐらいの戦績でしたね(笑)。卓球には団体戦もあるので、チームスポーツの面白さも味わえました。皆でわいわいとお酒を飲んだり、食事に行ったりして、一生の財産と言える仲間ができました。今も皆とは親しく付き合っています。
◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
旅行ですね。箱根や熱海に車や電車で行ったりしました。私は医師の子どもではありますが、「医者のぼんぼん」みたいな生活をしたくなくて、普通の学生生活を送っていたんです。それで、お金がなくて、旅行先で野宿をしたこともあります(笑)。
◆ 国立精神神経センター国府台病院を初期研修で選ばれたのはどうしてですか。
その頃は精神科に興味があったので、精神科に強みがある国府台病院を選びました。「人はなぜ生きているのか」、「人が生きる目的は何なのか」、「死んだらどうなるのか」といった死生観や人の精神というものを学びたかったんです。ところが、初期研修で様々な診療科をローテートするうちに専攻したい科が変わってきました。精神科よりも、皮膚科、内科、泌尿器科といった科の外来が面白かったんです。学生の頃のイメージと医師になってからの実際の仕事は違いますね。
◆ 皮膚科を選ばれたのは理由をお聞かせください。
私は学生時代から開業志向があったので、自分に向いている外来ができる科を選びたいと思っていたんです。皮膚科は人の生死を左右する疾患が少ないこと、即効性があって、治りが早いことに惹かれました。特にかゆみを解消してさしあげると、患者さんのQOLは飛躍的に向上しますので、患者さんへの貢献度を実感できるのが醍醐味でしたね。開業後に診ている泌尿器科や性病科にしても同様で、患者さんの喜びがフィードバックされやすい診療科だと思います。
◆ 初期研修終了後は国際医療福祉大学三田病院に勤務されていますね。
皮膚科の研鑽を積むために勤務しました。それから個人経営のクリニックに転職し、開業に備えた勉強をさせていただいたんです。
◆ クリニックに勤務して、勉強になったのはどんなことですか。
病院とクリニックの外来の違いですね。患者さんの不安を安心に、苦痛を回復に変えていく方法が異なります。病院は患者さんがその病院の名前やブランドで選ぶ面が大きいですし、最後の砦でもあります。しかし、クリニックは患者さんが最初にかかるところです。病院には診療の全てが求められますが、クリニックは全部を行う必要はありません。ただ、何を行うのか、何は無理なのかをはっきりさせる能力が求められます。そのためにはトークの力やサービスマインドが大事ですね。
◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
大きな病院は医療設備が充実していますので、診断できる疾患が多く、医療資源も豊富です。その良さを十分に理解できた勤務医時代でした。属性の全く異なる開業医に転身したわけですから、異世界に行くようなものでしたね(笑)
開業の契機・理由
◆ 継承の動機をお聞かせください。
佐藤皮膚科クリニックの佐藤昌三院長がご高齢で引退されると、共通の知人から伺ったのがきっかけです。佐藤先生は新宿駅前で20年以上、開業されていて、患者さんからの人望も厚く、信頼を得ている方ですので、有り難く継承させていただくことになりました。
◆ 佐藤院長は開業地をどのように決められたのでしょう。
佐藤皮膚科クリニックはこのビルの隣のビルの2階に入っていました。10坪でしたので、とてもコンパクトでしたね。新宿駅前ですから、近くに住んでいる方はほとんどいませんので、この辺りで働いている方のためのクリニックにしたいというのがコンセプトでした。働いている方はなかなか大きな病院にかかることができないのだと大学時代から認識していました。遅い時間や週末しか通院できないのに、その時間帯に診察してくれる医療施設は少ないです。新宿駅前で開業するからにはそういった患者さんのニーズに応え、気軽に受診していただける都市型のクリニックを目指しました。そして、私どもで全てを抱え込まず、積極的に病診連携、診診連携を行うことも決めていました。
◆ いつ移転をなさったのですか。
約1年後の2010年です。10坪はやはり手狭でしたね。すぐに1日平均150人ほどの患者さんが来られるようになり、患者さんが階段にまで行列になっていたのです。お加減が悪くて来院されているのに、立たせてしまっているのは申し訳なかったです。それで、このビルの2階の40坪の場所に移転しました。
◆ こちらのビルの第一印象はいかがでしたか。
前のビルの隣ですから、患者さんにご不便をおかけしないでいいという安心感がありました。ビルのオーナーさんが非常にご親切な方で、今もよくしていただいています。築年数の割に綺麗でしたし、ビルの1階がセブンイレブン、斜め前がスターバックスですから、患者さんに説明しやすい立地ですね。コンビニエンスストアは日常の食べ物や飲み物を買う場所ですから、同じビルに入居するのは想像以上に認知されやすいメリットがあると思います。そして、2014年9月に3階に移ってきました。今は70坪のスペースになっています。
◆ 継承にあたってはマーケティングはなさいましたか。
かなり熱心に行いました。1日60人という結果が出ましたが、競合も50軒ぐらいありますし、新宿駅前で開業するのは甘くないと楽観的にはなれませんでした。継承の1日前は緊張して眠れなかったんですよ。ところが、1日目から患者さんが来院してくださり、有り難く思いましたね。
◆ ご苦労された点はどんなことですか。
佐藤先生は80歳を超えたベテラン医師でしたが、私は当時28歳でしたので、患者さんからの信頼をいただくことが難しかったです。製薬会社や卸の会社の方々からも「大丈夫ですか」と言われ、ご心配をかけてしまいました。
◆ 医師会には入りましたか。
入りませんでした。皮膚科は内科のような健診がありませんので、医師会はあまり意味がないようです。
◆ 継承当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
私のほかは事務スタッフが1人だけでした。事務スタッフは佐藤皮膚科クリニックからのスタッフです。看護師がいなかったので、大変でしたね。採血がうまくいかなかったりすると、その患者さんだけでなく、次の患者さんまでいらいらなさっているようで申し訳なかったです。移転後にようやく看護師を募集しました。その間、事務スタッフは本当によく頑張ってくれましたね。
◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
電子カルテと心電図を新調しましたが、液体窒素やベッドなどは佐藤皮膚科クリニックのものをいただきました。継承してすぐに内装の壁紙と床を張り替え、お手洗いをリニューアルしました。電子カルテはシェアが大きいメーカーを選ぶべきですね。シェアが低いと開発が遅れますし、サポートシステムが終了する危険性もあります。それは患者さんのためになりません。電子カルテが停止すると医療も停止するのです。お金がかかってもフルサポートを行っているメーカーがいいですね。
◆ 2014年に3階に移転されたのですね。
この移転に関しては新しく購入したものはありません。診察のブースを増やした程度です。
◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
医師の動線が長いのは良くないです。医師の動きは遅れがちなので、ボトルネックになってしまいますから、医師が快適に診療できるような動線を意識した設計にしました。開業にあたってはかっこいい設計に惹かれる気持ちも理解できますが、やはり患者さんが待たないような作りにすべきですね。私どもでは待合のスペースを外側にぐるりと作って、中で集中管理できるようにしています。待合スペースの座席は70席あります。
内装は茶色とクリーム色といった落ち着いた色味をベースに、ホテルのようにリラックスしていただける空間にしています。私どもには高齢や子どもの患者さんはほとんどいらっしゃらないので、パステルカラーは避けました。ビジネスパーソンが中心の患者さん層ですから、高級感のある内装を心がけました。
クリニックについて
◆ 診療内容をお聞かせください。
皮膚科、内科、泌尿器科、アレルギー科、耳鼻咽喉科、性感染症内科を標榜しています。患者さんの割合はほぼ半分が皮膚科、内科と泌尿器科が4分の1ずつといったところでしょうか。皮膚科はにきびとアトピーが多く、水虫、手荒れ、いぼなどの一般的な皮膚科診療を行っています。美容皮膚科は行っていません。
内科は駆け込み寺的な存在ですね(笑)。「薬局以上、病院以下」を目指しています。保険診療の範疇で症状に合った薬を出したり、患者さんからの「眠くならない薬を」といったご要望に応えています。慢性疾患の方はほとんどいらっしゃらないですし、私どもとしても「かかりつけ医を持っておいてください」というお声がけをしています。
泌尿器科は男性は性感染症、女性は膀胱炎が多いですね。性感染症の患者さんは都内全域からいらっしゃいますし、前立腺がんや前立腺肥大症の患者さんもたまに来院されます。
◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
良質な医療、待ち時間の短縮、費用負担の軽減を掲げています。大学病院がホテルのレストランのステーキなら、私どもは牛丼チェーン店の牛丼なのです(笑)。「手軽で早くて、安くて美味しい」サービスを目指しています。また、医師6人、電子カルテ15台の体制で待ち時間の短縮に努めています。問診票をしっかり作成することも大事ですね。
◆ 保険外診療もなさっているのですね。
EDやAGAの専門外来を行っていますが、専門にされているクリニックがありますし、私どもの患者さんは少ないです
◆ 患者さんの層はいかがですか。
男性が若干多く、男女比は6対4ぐらいですね。20代から50代の患者さんがほとんどで、20、30代が中心です。ほとんどの方がインターネット経由ですよ。近くの飲食店で海老アレルギーを発症した患者さんがスマートフォンで検索して、症状発生から20分で来院されたこともあります。以前でしたら救急車を呼ぶところだったでしょうが、時代は変わりましたね。
◆ 病診連携については、いかがですか。
東京医科大学病院、JR東京総合病院にご紹介するケースが多いです。美容皮膚科に関しては湘南美容外科と連携しています。
◆ 経営理念をお教えください。
患者さんに付加価値を与えてさしあげながら、優位性を保つことです。私どもの優位性は立地が良いこととインターネットに強いことですね。スマートフォンでいかに見つけていただけるかということを考えています。患者さんに選んでいただけたり、患者さんからの口コミが業績を向上させる仕組み作りをこれからも行っていきたいです。
◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
ミーティングや朝礼は一切していないです(笑)。強制的に参加させることに違和感があるので、忘年会などもないですね。こちらが強く言ったからといって、他人を変えることはできません。「皆で頑張っていこう」という空気のあった70年代、80年代ならともかく、今は個人の時代です。私どもはホームページに理念をきちんと紹介していますので、その理念に合う人が入職してくれています。ただ、仕事についてのマニュアルはしっかりしたものを作成していますし、何かあれば直接、話したり、電話やラインで連絡をし合ったりしています。
◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
ビルの入口に看板を出しているほかはホームページなどのIT対策ですね。IT対策にはかなりの予算をかけています。
開業に向けてのアドバイス
まずは立地が大事です。次にビジネスモデルを構築することですね。医学部では医学は教えられますが、経営については教わらないので、勉強が必要です。スタッフのマネージメント、増患対策をどうするのか、どこに経営資源を傾けるのか、どういう患者さんをターゲットにするのか、どんなスタッフを雇用するのかといった戦略が大事だと思います。
クリニックに長く勤めてくださった先生には、開業支援をおこなっております。大学病院や総合病院で長く勤務していたけど、クリニックの経験が少ないので、開業ノウハウを学びつつ、働いてくださっている先生もおります。クリニックならではの問題も、現場にいることにより体感し、医師として以外にも、管理者として、経営者として学ぶことも可能です。これから新規開院をお考えの先生方は、一度、クリニックでご勤務されることをおすすめいたします。
当院も医師を募集しておりますので、お気軽に、メール(蓮池宛)catdog8461@gmail.com もしくは、お電話にてご連絡ください。
プライベートの過ごし方(開業後)
旅行が趣味ですね。海外旅行よりも国内旅行が好きで、日帰りで温泉に行ったりしています。日頃は外食するのも楽しみの一つです。また、インターネットは仕事も兼ねた趣味ですね。昔から詳しかったわけではなく、開業する直前から猛勉強を始めたんです。本だと系統立てて学べますから、本で知識を得ました。インターネットの世界は本当に日進月歩ですので、常に時代の波に乗れるよう、最前線の内容を勉強しています。
タイムスケジュール
クリニック平面図
クリニック概要
新宿駅前クリニック | ||
院長 | 蓮池 林太郎 | |
住所 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-11-11 河野ビル3階 |
|
医療設備 | 心電図、液体窒素、電子カルテなど。 | |
スタッフ | 20人(院長、常勤医師6人、常勤看護師3人、非常勤看護師1人、常勤事務7人、非常勤事務2人) | |
物件形態 | ビル診 | |
延べ面積 | 70坪 | |
敷地面積 | 70坪 | |
開業資金 | 1,000万円(継承時)、5,000万円(移転時) | |
外来患者/日の変遷 | 開業当初40人→3カ月後70人→6カ月後100人→現在400人 | |
URL | http://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info/ |
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