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川間春日町整形外科小児科クリニック

外川誠一郎 院長

外川誠一郎 院長プロフィール

1963年に山梨県塩山市(現 甲州市)で生まれる。1989年に旭川医科大学を卒業後、現東京女子医科大学東医療センター整形外科に入局する。1992年に獨協医科大学越谷病院整形外科に勤務する。同大学病院退職後、千葉西総合病院小児科で研修を行う。また、東京医科歯科大学医学部附属病院で高気圧酸素治療に携わる。2001年に新潟県三条市の医療法人積発堂に勤務し、その後、東ヶ丘整形外科に院長として赴任する。2013年12月に千葉県野田市に川間春日町整形外科小児科クリニックを開設する。
久喜総合病院整形外科非常勤医師、東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科非常勤講師、獨協医科大学越谷病院整形外科非常勤講師、千葉西総合病院小児科非常勤医師を兼任している。
日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション専門医、日本リウマチ学会専門医など。日本手の外科学会、日本小児整形学会にも所属する。

 千葉県野田市はキッコーマンの創業地として知られる、千葉県最北端の市である。野田市の東は利根川、西は江戸川、南は利根運河が流れ、三方を河川に囲まれている。利根川を挟んで対岸が茨城県、江戸川を挟んで対岸が埼玉県となっている。1894年に開園した清水公園は花見の名所であり、日本さくら名所100選に選定されている。
 川間春日町整形外科小児科クリニックは東武野田線(東武アーバンパークライン)の川間駅から徒歩12分の場所に2013年12月に開業したクリニックである。整形外科と小児科を標榜するクリニックは珍しいが、外川誠一郎院長が整形外科を、宮川政昭副院長が小児科を主に診察する体制をとっている。
 今月は川間春日町整形外科小児科クリニックの外川誠一郎院長にお話を伺った。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 強い動機があったわけでなく、消去法的に決めた感じですね(笑)。ただ、浪人時代に渡辺淳一さんの本を読み、医師の世界に漠然とした憧れはありました。それで、渡辺さんのように北海道の大学を目指したんです。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 遊びも勉強もほどほどにやっていました。勉強は留年しない程度に頑張ったというところでしょうか(笑)。卒業旅行でヨーロッパに行ったのが初の海外旅行だったのですが、楽しかったですね。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 旭川医大にはスキーの授業があったので、スキーには親しみました。北海道ではありましたが、スキューバダイビングもはじめ、後に医科歯科大での仕事へとつながりました。


◆ 整形外科を選ばれたのはいつですか。
 卒業間近の頃です。渡辺淳一さんの影響もありましたね。当時は整形外科バブルと言われていた頃で、非常に人気のある診療科でした。どの大学でも20人ぐらいが入局していたんですよ。


◆ 東京女子医科大学に入局されたのはどんな理由からですか。
 東京女子医科大学はいわゆる「外様」ばかりですから、地方の大学出身であっても入局しやすいんです。整形外科もほとんどの医師が外部の大学出身者でしたので、そういった雰囲気が良かったです。


◆ 実際に入局されてみて、いかがでしたか。
 配属されたのが東医療センターでしたから、小じんまりとした規模で働きやすかったですね。大学病院というよりは町の開業医といった感じの病院なので、医師としての基礎を養うには最適な環境だったと思います。ただ、専門性を高めるうえでは物足りなさもありました。そんなときに、上司が獨協医科大学越谷病院の近くの病院に転勤されたので、私も獨協医科大学越谷病院に勤務させていただくことにしました。獨協医科大学越谷病院は規模が大きく、仕事量も増大しました。


◆ 獨協医科大学越谷病院ではどのような専門をお持ちになったのですか。
 手の外科です。獨協医科大学越谷病院が救命救急センターを作るときでしたので、マイクロサージャンが必要という点より、手の外科の勉強をさせられました。3次救急の担当は、医療全般をみる点より、開業にも利点がありました。血管を縫うなどの治療を行っていました。


◆ 整形外科の魅力はどんなところにありますか。
 論理的なところです。面白い診療科だと思いますね。いい加減なことはできないですし、どんな治療を行っていても、遣り甲斐がありました。


◆ 小児科を学ぼうと思われたのはなぜですか。
 整形外科医として、外傷などの大きな手術にずっと携わっていくことは体力的にも難しいのではないかと思ったからです。千葉西総合病院に研修医として働き、その後も週に1回の外来を行っておりました。


◆ 新潟県の東ヶ丘整形外科にも勤務されていますね。
 新潟手の外科研究所病院で研修した際にお世話になった先生に声をかけて頂き、三条市富永草野病院に勤務をはじめました。その後同法人の分院である東ヶ丘整形に勤務する事になりました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 お金の面では気楽でした。経理面だけではなく全てにおいて、開業してからの方が大変です(笑)。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 クリニックを経営してみたいという考えは以前から漠然とあったんです。自分の意志で物事を決定していくことが魅力でしたし、今後、どのように仕事をしていくかと思ったときに自然と開業の道を選びました。


◆ 開業にあたっては整形外科と小児科の両方をメインにしようとお考えになったのですか。
 確かに小児科医としての経験も10年ほど積みましたが、小児科を私一人で診ていくことには自信が持てなかったんですね。そこで、千葉西総合病院の同僚だった宮川政昭医師に副院長として来ていただくことにしました。
 整形外科と小児科を同時に標榜するクリニックは日本では珍しいですね。ただ、小児科の患者さんは多くは感染症で、整形外科の患者さんは高齢の方が多いので、待合室などで感染をさけるため、整形外科と小児科の入口を分けることにしました。


◆ 開業地はどのように決められたのですか。
 医療過疎地域で開業したかったので、最初は茨城県内や野田市関宿などで探していたんです。そこへ、開業コンサルタントから現在の場所をはどうかと勧められました。


◆ どのような土地だったのですか。
 雑木林と歯科医院だったところで、小児科の建物は歯科医院の跡を改装しています。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 広すぎるかなという第一印象でした。でも、獨協医科大学越谷病院に近いですし、今どき珍しいことに整形外科の競合がありませんでしたので、気楽に開業できそうだと思いました(笑)。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 診療圏調査を行いました。数字としては良くなかったのですが、競合がないので、あまり気に留めませんでした。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 建物の工期が遅れ、予定通りに建たなかったことでしょうか。私としては、クリニックの建築に慣れている住宅メーカーよりもクリニックを初めて建てるところにお願いしたかったんです。しかし、それが大変でしたね。レントゲンを入れる部屋の建築に手間取り、付け直しになったりしたので、9月の開業予定が12月にずれ込みました。しかも、12月には小児科しか開業できず、整形外科の開業は1月になってしまいました。


◆ 医師会には入りましたか。
 野田市医師会に入りました。入会に際してはスムーズに入れていただけました。ただ、入会費は高かったですね(笑)。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 副院長、非常勤の看護師が3人、非常勤の事務スタッフが5人、常勤の放射線技師1人、非常勤の臨床検査技師1人でした。開業当初は理学療法士はいなかったんです。2014年6月にようやく常勤の理学療法士に来てもらえることになりました。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レントゲン、心電図、CT、電子カルテは最初からありましたが、MRIは2014年4月に導入しました。MRIは知り合いの開業医は皆が持っていますし、私も導入したいと思っていました。医療機器は全て買い取りで、リースはしていません。リースだと運転資金が厳しくなりますからね。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 整形外科ですからバリアフリーは欠かせません。建築会社には「気に入らなくなって、あとから作り直すこともあり得るのだから、シンプルにしてください」とお願いしました。内装は清潔感のあるものをと言いましたが、外装に関しては建築会社にほぼ任せましたね。野田市は車社会ですから、駐車場は40台分を確保しました。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 整形外科と小児科を標榜しています。整形外科は子どもの患者さんが多いのが特徴です。ほかの整形外科クリニックでは子どもの患者さんは1割以下だというところが一般的なのですが、私どもでは2割を超えています。子どもの患者さんは外傷、スポーツ外傷、股関節炎、腫瘍がメインですね。大人の患者さんでもほかの整形外科クリニックよりは平均年齢が10歳は若いのではないでしょうか。したがって、変形性膝関節症などは少ないですね。膝、肩、腰などを幅広く診ています。
 整形外科では週に4日ほど手術日を設け、完全予約制で手術を行っています。また、理学療法士による運動療法も特徴ですね。


◆ 小児科に関してはいかがですか。
 小児科はプライマリ・ケアですが、MRIやCT、エコーを使った検査や院内緊急血液検査ができるのが強みです。常勤の放射線技師もいますし、小児科でありながら整形外科の高度な医療設備が利用できます。小児科を診ている宮川副院長の専門は気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症などで、患者さんも多いですね。予防接種にも力を入れています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 自分自身が納得できる医療を行いつつ、それが患者さんの利益になればと思っています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 子どもさんから高齢の方まで幅広いですが、90歳以上の方はほとんどいらっしゃいません。野田市は戦後に新しく開発されたニュータウンですので、団塊の世代が多いですね。3割負担の高齢者の方もいらっしゃいますが、大多数ではありません。働いている世代の3割負担の方にはMRIなどの高額な検査は勧めにくいですね。


◆ 健診はどのような内容で行っていらっしゃいますか。
 今は特定健診はお受けしていません。小児科の一般的な健診のみです。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 疾患別では、背骨なら東埼玉総合病院、手の外科ならキッコーマン総合病院、小児科なら小張総合病院が多いです。あとは患者さんのご希望に合わせて、ご紹介しています。


◆ 経営理念をお教えください。
 キャッシュフローが多く、経営の難しさを実感しています。今後の方針としては診療の質を高めたいと思っています。患者さんにきちんと向き合おうとすれば、数だけを増やしていくことはできません。ただ、小児科に関しては余裕がありますので、まだ増患できると思っています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 スタッフ教育についても課題です。以前は朝礼を行っていましたが、私が診療を早めに始めてしまうので、朝礼の時間がなくなったんですよ。忙しいので、スタッフ教育のための時間が取れないのが悩みです。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページのほかは看板ぐらいですね。看板は川間駅に1カ所と、屋外に2カ所、出しています。患者さんの来院動機はほとんどが口コミです。


開業に向けてのアドバイス

 これからの開業は本当に大変だと思います。一方で、整形外科の勤務医の待遇は最近、かなり改善されてきました。整形外科医不足だからか、手術代などで優遇する病院が増えてきたようですね。開業すると手術もできなくなりますから、勤務医としての遣り甲斐を追求するのもいいのではないでしょうか。それでも開業をという場合は、整形外科はリハビリ器械などがあり、どうしても大規模に開業せざるをえませんから、自己資金の確保をしておかれることをお勧めします。

プライベートの過ごし方(開業後)

 休日もひたすら院内業務に追われています。最近は休み自体がないですね。2カ月に1回は野田市の休日診療の当番も行っています。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

川間春日町整形外科小児科クリニック
  院長 外川 誠一郎
  住所 〒278-0052
千葉県野田市春日町25-30
  医療設備 レントゲン、心電図、MRI、骨密度測定装置、CT、電気治療器、温熱治療器、ホットマグナー、SSP、干渉波治療器、頚椎牽引台、腰痛牽引台、アクアベッド、メドマー、渦流浴、電子カルテなど。
  スタッフ 22人(院長、副院長1人、非常勤医師1人、常勤理学療法士1人、非常勤理学療法士1人、非常勤臨床検査技師3人、常勤放射線技師1人、非常勤看護師5人、常勤事務2人、非常勤事務3人、非常勤清掃スタッフ1人)
  物件形態 戸建
  延べ面積 150坪
  敷地面積 450坪
  開業資金 3億円
  外来患者/日の変遷 開業当初50人→3ヵ月後80人→6ヵ月後120人→現在140人
  URL http://seikei-shouni-clinic.com/

2015.04.01 掲載 (C)LinkStaff

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